初恋
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「え?ゆっきーが変?」
首を傾けるのと同じタイミングで小さな触覚がぴょこんと揺れる。
「んー…なんて言えばいいんだろう…なんだか…やる気なくて、いつも上の空で…」
そう言うと、目の前にいる金髪はキョトンとした顔でこちらを見つめ、しばらくの沈黙をおいてそのブルーの目から涙を流して爆笑した。
「ちょwwwwwwwwゆうたん?wwwwそれいつも通りじゃんwwww」
「んー…でも、なんていうか…多分会えば分かるん…」
そう言いかけて窓の外を見ると、1人で下校する弟を見つけた。
その様子を見てさっきまで爆笑していた千鶴もぽかんと口を開いたままかたまっている。
「ねえ千鶴」
肩を揺するとピク、と反応してこちらを見た。
「悠太さん…これは事件です…」
探偵気取りで顎を手でしゃくりながら目を細める姿を見て、はぁ、と思わず間抜けな声を出す。
「名探偵千鶴の推理をお聞かせしよう」
たかが千鶴の推理だけど相談してしまったのは俺だしきかなくては、と少しだけ思ってしまったのは内緒。改めて向き直った。
「私の推理1、反抗期」
案外まともである。
「反抗期というのはですね、ーー」
なんかゴタゴタ言ってるけどそれも一つかもしれない。そっか、反抗期か。
「私の推理2!!」
俺としては反抗期でもう納得がいっていた。しかし千鶴の口は止まらない。
「ズバリ、恋…!」
「こ、い…?」
気付くとその2文字を復唱していた。
あの祐希が…
恋?
しばらく目を丸くして驚いていた俺だが、すぐにその丸くした目を細めてフッと笑った。
そうか、祐希が恋…ね。
もう一人前なんだ。
お兄ちゃんがいなくても平気だn
「待ちなさい悠太さんこれはあくまでも推理です」
「恋ねぇ、それはよかった。お兄ちゃん嬉しいな」
「ってコラ人の話聞けえええええええええええ!!!」
千鶴の叫び声で俺は現実に引き戻される。
「で、他に変わったことは…?」
一応友達が心配なのだろう。眉を下げて俺に問いかける。
「ん…一緒に本屋に行かなくなった、かな……だから最近はお金も貸してないや。」
「ええ!?漫画卒業したの!?」
「俺が聞きたいってば…」
真剣に考える顔がなんだか可愛くて、自分よりだいぶ低い位置にあるその頭をクシャ、とかき回した。
「ちょっ…!!ちょっと身長が大きいからって…」
「ありがとね」
「えっ…?」
「俺の弟のこと、真剣に考えてくれて」
微笑みかけると、白い肌はみるみるうちに真っ赤になっていった。そしておもむろに口を開く。
「な、なんで俺にきいたんだよ、ゆっきーのこと」
投げやりのようにきいてきた。
「そりゃあ千鶴が、
俺の大事な弟の親友だからに決まってんじゃん」
ポンポン、と頭を優しくたたく。
「く、くそぉ…おんなじ顔で笑ってんじゃねえよぉ…」
顔を真っ赤にして取り乱すその姿を見て少しだけ可愛いなんて思ってしまった俺だった。
(祐希、こんな可愛い子に想われて幸せ者じゃん…はやくいつも通りに戻りなよ)
心の中でそう呟いてため息をついた。