夏目友人帳

□内緒の薬*
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蝉の声。







青い夏空。







平和だ。







平和すぎるくらい、平和だ。







でもそれは、周りの人からしてみたら。







俺には見える。







俺にしか見えない。







俺の周りには沢山の妖怪がいた。







「夏目様!夏目様!」

「ごめん、後でいいか?これから友達の家に行くんだ」






そう、俺はこれから友達の田沼の家に遊びに行く。
…とはいっても、ただ、この近辺に怪しい妖怪がいるということを伝えに行くだけであるのだが。







「それならこれを飲むといいですよ!!」

「なんだそれ……怪しい」







小さな妖怪が渡してきたのは見たこともない植物の実。







「これを食べた者は世界一美しくなれるという噂を聞いて、夏目様の為に遠くまで探しに行って来たんです!」

「ごめん、遠慮しとく」







どう考えても怪しいだろそれ。







友達の家に遊びに行く前に不祥事を起こすようなことはしたくない。







「スキあり!!」







しまっー…







「んぐっっ」

「大成功!」

「おーまーえーらーっ!!!!なんてことしてくれんだよ!戻す薬は⁉」

「戻すも何も、夏目様何も変わってないじゃないですか」

「え?」







ほんとだ…







「ちょっと驚かせただけですよ!ただの果物です!美味しかったでしょう?」

「な、なんだよもう!驚かせないでくれ!…でも、美味しかった。ありがとう」

「あ!夏目様!お時間大丈夫ですか⁉」

「ん?…マズイ!!ごめん!お礼は後でするから!!」







俺は走って田沼の家に向かった。






体の変化にも気付かないまま。







こんなことならあんな妖怪信じるんじゃなかった、そう思ったのは既に田沼の家に着いた時だった。







「な、つめ…⁉」

「すまない田沼…//とりあえず家に入れてくれないか…?//」

「分かった!早く入れ!!」







田沼の部屋に入り鏡をみると、体の変化は目に見えて分かった。







はち切れんばかりのワイシャツ。
胸が苦しい。
腰が細くなりズボンが落ちた。







俺は奴らに女体化する薬を飲まされたのか…

なんの得があるんだよ!







イライラしながら服を脱ぎ捨てた。







「うわ夏目!何してんの⁉//」

「あぁ⁉何って…!」







そっか…今俺女……⁉







自分の体を見る。







「わっ//」







初めて見る女の体。







「とりあえずこれ着て!」







田沼がパーカーを投げた。







「それなら俺にも緩いから着れるよな…」

「ああ…ごめん」

「また妖怪にやられたのか?」

「俺が迂闊だったんだ…そうだ田沼、俺が今日ここに来たのは…」







本来の目的を話す。

怪しい妖怪のことだ。

今回ばかりは田沼の協力が必要だった。







「怪しいっていうのは具体的に…?」

「それが俺にもよく分からないんだ。謎の粉をまいて飛んでるらしいんだけど、かけられた妖怪におかしな様子はないんだ。」

「妖怪には作用しない粉なのか」

「そう。人がかけられる被害はまだないらしいんだけど、早いうちに粉の成分を調べないと後々大変なことになるかもしれないから」

「ああ、分かった。…あのさ、夏目…その体は…」

「多分時間がたてば戻るはずだから大丈夫」







そんな確信はないんだけどな。

心配はかけたくない。







「レイコ?」







え?
嘘だこんな時に…







「夏目?どうした?」







「ああああああああああああああああああレイコだレイコだレイコだレイコだレイコだレイコだレイコだレイコだレイコだレイコだ」

「違う俺は…!」







「夏目しっかりしろ!」







「あははははははは嬉しいわ!会いたかったわレイコおおおおおおおおお!!!!」

「やめろ!」







上から粉が降ってきた。







「お前だったのか!粉をまいてる妖怪っていうのは!!今すぐやめろ!」







「あはははははははははははっ!!!!!!!!!」







ダメだ!そっちには田沼が!!!







「下がれ田沼ああああああっ!!」







覆いかぶさるようにして粉を防ぐ。







「田沼は関係ないだろ!やるんだったら俺に!!」







「へえ!友達できたのねレイコ!…それじゃあ失礼して」







「ぉえっゴホッゴホッ」







粉を飲まされた…大量に……







「夏目!夏目!大丈夫か⁉」

「粉を、飲まされた…」







「うふふっまた会いましょう!レイコ!」







「くっそ…ぅぐっ……すまない田沼…少し……休ま、せて…く、れ…」

「夏目!!」







そのまま田沼の胸に倒れこんだ。
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