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□危険な瞳
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苛々する。あの憎らしい顔を殴ってやりたい。
いつもいつも、人を見透かしたように笑う顔が大嫌い。
「気分は如何ですか?」
「いいわけないでしょ」
こいつに捕まって、どのくらいの月日が流れたのか覚えてない。
数えるのも嫌になるぐらい――つまり長い間囚われの身ってわけ。
「また食事に口をつけてないのですね」
「…………」
つける訳がない。
何が入ってるか分からないし、こいつが用意した物なんて特に。
「いい加減にしないと倒れますよ?」
「そのまま死にたいわよ」
いつまで私を監禁するの?なんて、もう聞かない。
言い飽きたし、聞き飽きた。
「死にたいのですか?」
まずい。こいつを怒らせたかもしれない。
私の両手両足には壁から長い鎖で繋がれてる。
少し動いたり食事する分には不自由ない長さ。
だけど、逃げる事なんて出来ない。だから、六道 骸が近付いて来ても逃げられない。
「水和。死にたいのですか?」
何も答えない私を責めるように同じ言葉を繰り返す。
顎を引かれて上を向かされれば暗くて、静かな怒りを宿したオッドアイの瞳とぶつかる。
正直言えば、とても怖い。
今私の目の前に居る 六道 骸 は、何を考えているか分からないし、分からせてもくれない奴だ。
絶対に他人に考えを読ませない。
私はどうなってしまうのか?何をされるのか?
どうして私を閉じ込めるのか……分からない…。
「一体私をどうしたいのよ」
「…どうしたい、ですか」
私が発した言葉を繰り返し、呟くと口角が上がる。背筋がぞっとするほどの気味悪い笑顔――否、笑顔なんて優しいものじゃない。
この笑顔だけで人を地獄に落とせるんじゃないかって思わせるくらい。
「聞かずとも分かっているんじゃありませんか?」
「………………」
こいつは私を一生逃がさないつもりだ。
そんなのは最初に此処に連れて去られた時に分かっていたつもりだった。
だけど今、ほんの微かな希望さえ砕かれた。
六道 骸のから伝わる、重苦しいオーラが逃げる事は不可能だと悟る。
「貴女を閉じ込めて、一生愛してさしあげます」
「……………」
「水和を見る者、触れる者、話し掛ける者、全て排除します。水和には僕だけ居ればいいんです」
狂ってる
こんなの、こんなの………
「愛していますよ。だから―――――二度と外には出しません。僕だけの水和」
愛じゃない
〜End〜