P4 long

□雨空
1ページ/1ページ




「えええぇぇぇぇっ!?」

「うるさいっ!!」



騒ぎたくもなる。だって、だってだって!!愛ちゃんがバスケ部のマネージャーだよっ!?

あのめんどくさがりの愛ちゃんが!!



「あんた失礼な事考えてるでしょ?」

「め、滅相もない!!」



あーーー羨ましいっ!!一条君と一緒にいれるって事だよね!?

ただでさえ愛ちゃんは一条君と同じクラスなのに!!羨ましい!羨ましすぎるぞ愛ちゃん!!

そんな心の声が聞こえたのか何なのか、愛ちゃんは呆れたみたいにため息をはく。


「やりたくてやる訳じゃないんだから…」

「――ん?なんで引き受けたの?」

「教師がマネージャーでもやらないと進級させないって言うから仕方なくよ」

「あぁ…出席日数足りないんだっけ?」



だからマネージャー?


……………私もちょこっと休みがちになれば……。



「変なこと考えてないでしょうね?」

「うへっ!!やややややややだなっ考えてないよ!」



ものすっごく呆れた目をされた……。そ、そんな目をされるのは慣れたよ!!

鳴上君とか愛ちゃんとか花村とか鳴上君とかのお陰でね!!


……あれ?なんか自分の発言おかしかったような…。



「でも、あんた的にはよかったでしょ?」

「なんで?」



愛ちゃんが意地悪そうに口角を上げて笑う。


可愛いとこういう笑い方も絵になるんだなぁ〜〜。



「バスケ部に来る理由が出来たでしょ?」


「…………………へへっ」



確かに。鳴上君に協力してもらってはいるけど、鳴上君は忙しいから頻繁には部活に行けない。


そう考えちゃうと……魅力的。



「ニヤニヤしないでよ。気持ち悪い」

「仕方ないでしょ!!」






*******






今日は寂しく一人で下校です。

鳴上君はいつも忙しいし、花村はバイトだわ、千枝は何かの発売日だとかで一目散に帰るわ、雪子は家が忙しいみたいで慌てて帰っちゃったし……巽君も既に帰った後だった……。

愛ちゃんはおサボリ。



あれ?なんか私だけ暇人?




…………さ、寂しくなんか………うぅっ……。



「氷月さん!」

「一条君?」



校門から走り寄ってくるのは間違いなく一条君!!

ななななな何で!?



「今帰り、だよね?」

「う、うん!一条君も?」

「そうだよ。一緒に帰らない?」

「っ!!!勿論ですっ」



ぎゃーーーー!!嬉しい!
いや、嬉しいなんかじゃ表現出来ない程の幸運だよ!これ!?


でも!でも!……何話せばいいの?



「初めてだよね。こうして話すの」

「そ、そうだね!!」



おバカ!!もっと他に言う事あるでしょーが!


「なんか緊張してる?」

「っ!?そ、そんなことはっ」

「氷月さんって本当に面白いなっ。それに分かりやすい」



笑いを噛み殺すみたいに喉の奥でくくっと笑う。


そんな事なのに、凄く幸せ。凄く満ち足りてる感じ。………一条君が好きだよ。



「ごめんね、笑っちゃって」

「そんなっ、気にしてないから!……むしろ嬉しいよ」

「嬉しい?」



つい口にしちゃったけど笑われて嬉しいって私、変態みたいだよ……。


「変な意味じゃなくてっ。笑ってくれてよかったって言うか……き、嫌われて…ないんだなって」



上手く言えない。嬉しくて気持ちだけが溢れて先走って……伝えたい事が言えない。



「えぇ!?俺、嫌われてるかもって思わせることした?」

「そ、そうじゃなくて! 何て言うか、私達……話すようになったの最近だから、どう思われてるんだろうって……」



どう思われてるなんて聞かなくたって、ただの同級生としか認識されてないのは分かってる。

だけど聞きたい。

一条君の気持ちが知りたい。一条君の口から聞きたいっ。



「友達になりたいって思ってる」


「………―――え?」

「もっと氷月さんの事知りたいって思うよ」




「…………ありがとう」



嬉しい。嬉しいはずなのに……、どうして胸が痛いんだろう?

友達になりたいって思ってもらえるだけ、以前より凄く幸せなのに何を望んでるの?贅沢すぎるよ。


これ以上に望むものなんてない。望んじゃいけない。





これでいいの。これで私は……幸せ、だから。










[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ