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□07 裏Side
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裏Side


最近よく耳にする話題。それは九代目のご子息であるザンザス様。

最近かなり暴れてるだとか荒れているとか、そんな物騒な話ばかり。


でも私はそんなことよりも、今まで一度も会ったことがない方が気になった。
だってボンゴレのお屋敷に居て三年も経つのに一度も会わないなんて……。





「ゔぉい。どうしたぁ?」


スク兄さんと稽古中であったのに、そのことばかり考えていたせいか、いつの間にか手が止まっていて顔を覗き込まれた。



「うぅん、…なんでもない」

「………――なら、さっさと続きやるぞぉ」



言わないのはボンゴレ内の事であんまりスク兄さんを巻き込みたくないし、それに―――最近はスク兄さん自身も何かあったのか異常に私と修業したがる…。
修業自体は出会った時からちょくちょくしているけど。


だから余計に私のこんな疑問ぐらいで気にかけてもらうのも悪い気がした。



「スク兄さんこそ何かあったの?」

「…、あるわけねぇだろぉ」



嘘なんだろうな。

何もないなら言葉を詰まらせるわけない。
特にスク兄さんはハッキリ物事を言うから余計に分かりやすい。

これでも一年間、スク兄さんと過ごしてきたんだから多少なりともスクアーロという人物を分かっているつもり。


まぁ、私も何もないなんて言ったけど、それが嘘だってこと気づいてるだろうしお互い様なんだけど……。



とりあえず今は考えるのをやめて修業に専念しよう。
修業で手を抜いたりしてスク兄さんの機嫌を損ねるのだけは避けたい。



「いくぞぉっ!!」

「はいっ!」



掛け声と同時にお互い剣を携え踏み込み、刃が交差して火花が散る。


暫く森の中は私達が交わす刃の金属音が鳴り響いた。




******





「はぁ〜〜〜、今日は一段と疲れた…」



修業が終わってボンゴレの屋敷内、座談室のソファに座り一息つく。


なんだか最近の修業はかなり気合いが入ってる気がする。

正直かなり身体がキツイ。まぁリボーンさんよりは………マシ?



「今日は遅かったじゃねーか」


「リボーンさん!すみません、今戻りました」

「あぁ、それより無理はしてねーだろうな?」



リボーンさんの修業が終わると、私は直ぐにスク兄さんの所に行くから体調を心配してるんだと思う。

それに加え、私が誰と会ってるか知らないから余計に心配をかけてる。

一応、その辺りは『以前助けてもらった人』に修業をつけてもらってるって言ってある。――けど名前は教えていない。

この説明じゃ心配するのも無理ないよね…。


何故なのか私はスク兄さんの名前を出すのに迷いや躊躇がある。
知られたくない―――とかじゃなくて知られちゃいけない。そんな気持ちが私にあって……。



「ちょうどいい、水和。大事な話がある」

「はい?」

「――俺は今日をもって、お前の家庭教師を辞める」



「………………えっ…」



一瞬何を言われたのか理解出来なかった。
……違う。言葉の意味は分かってる。

ただ、言葉の意味が分かっても理解出来ない。


だっていきなり家庭教師を辞めるだなんて―――いくら何でも急すぎる。



「どっどうしてですか?
私が不甲斐ない生徒だからですか!?」

「落ち着け。そうじゃねえ」



落ち着いてなんていられるわけない!
だってこの三年間ずっと私の修業をしてくれて、両親が亡くなった時、辛い時だって傍にいてくれた。

甘やかしたりはしなかったけど、黙って傍にいてくれたし、私が間違ったことをしようとすれば叱ってくれた。
これからも傍にいてくれる……傍にっ、いるのが当たり前に――――なってた。



景色がぼやけて見える。

目が熱い。



「っ!!……」



涙がこぼれる、そう思った時―――。



「俺は不甲斐ないなんて思っちゃいねぇ。
むしろ立派になったと思ってるぜ」


「…リボーンさん」


「お前は俺の大事な生徒だ。
今までもこれからもそれは変わらねぇ」



立派になった。

大事な生徒。


その言葉だけで凄く嬉しい。
リボーンさんはあんまり褒め言葉は言わないから余計に嬉しくなる。

本当にそう思ってくれてるんだって実感できるから。



「家庭教師を辞めるのはお前がもう充分に強くなったからだ。
まぁ、まだ教えてやりてー事は色々あったけどな」


「…っ強く、なったでしょうか…?」

「ああ、身も心もな。俺が保障する」



リボーンさんの言葉は嬉しいけど腑に落ちない。そこまで私は強くない。

実戦の戦いだって、両親が……――殺された時だけ。
他はボンゴレの人達に相手してもらったり、スク兄さんと手合わせするだけだったり。

模擬はあっても実戦経験は全くない。
それで強いと言えるのか……。



「水和。実戦経験がないから弱いってわけじゃねーぞ」

「………」

「勿論、実戦は積めば積む程いいのは当たり前だ。だけどな、実戦経験のないお前があの時勝てたのは実力がついた証だろ?」

「あの時……」



あの時―――、両親が殺された夜。
確かにあの時、私は2人の人間を殺した。


修業をしていなければ、呆気なく殺されてたのは間違いない。
ましてや、相手はプロの殺し屋。


相手が油断していたとはいえ、勝てたのは確かに修業をしていたから。
リボーンさんの修業―――と、スク兄さんのお陰で私は生きてる。




「…自信、持っていいんですか?」

「あたりめーだろ。俺の生徒だからな」




最後まで私はリボーンさんにお世話になりっぱなしだけど、これからはリボーンさんの元生徒として恥じないように頑張らなきゃいけない。
こうして嬉しい言葉や励ましを言ってくれたんだから尚更。




「あの、これからリボーンさんはどうするんですか?」

「依頼や任務があるんだ。それを片付けようと思ってるぞ」


「……また会えますよね?」

「イタリアにはいるからな。いつかは会えんだろ。それから、家庭教師としてこれだけは最後に言っておく。
修業だけじゃなく、ボンゴレの知識をもっと学べよ」



それだけ言うとリボーンさんは屋敷から出ていった。

いつかは会える。なんだかリボーンさんらしくて笑ってしまう。
次会うときはもっと立派になって驚かせたいな。

……その為に勉強もしなきゃだけど…。流石にもう、逃げるわけにはいかない。


長いようで短かった……。私の家庭教師 リボーンさん。

楽しい時、辛い時、悲しい時、いつも近くに居てくれて、修業をつけてくれて―――――――。

本当にありがとうございました。




もうリボーンさんの姿は見えないけど出ていった方向へ、――言葉では言い表せない程の感謝の思いを込め深くお辞儀をし気持ちに整理をつけた。







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