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□07 裏Side
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あのあと、書庫に行って勉強しようとしたけど胸のモヤモヤも不安も消えなくて結局何もしなかった。

だから予定より早いけど、スク兄さんの学校へ行くことにした。


学校へ向かう途中、何人かの生徒とすれ違う時に聞こえた会話。



「聞いたか?スクアーロがヴァリアーのボスと戦うって」



スク兄さんがヴァリアーのボスと?



「聞いた聞いた。流石のスクアーロも今回ばかりは負けるだろうな」

「でも、負けても結局はヴァリアーに入隊するんだろ?」

「あ〜スカウトされたんだもんな。
強い奴はいいよな〜」



ヴァリアーにスカウト?そんな話…私聞いてない…。

なんでスク兄さん…言ってくれなかったの?



でも、確かにスク兄さんはヴァリアーにスカウトされてそのボスと戦う…。


ボスとスク兄さんとの決着は………どっちが勝ったんだっけ?

……思い出せない……。




「っ!!!」



まただ。また…知るわけのない未来を知ってるような感覚。


なんなの?



「水和かぁ?」

「っ!スク兄さん…」



私を見たスク兄さんは眉間にシワをよせた。
そんなに情けない顔を私はしていただろうか…。



「どうした?んな顔すんなぁ」



スク兄さんは乱暴な手つきで私の頭を撫でる。



「スク兄さん」

「なんだぁ?」

「ヴァリアーのボスと戦うのいつ?」



スク兄さんが息をのんだ。
私に言うつもりはなかったんだって嫌でもわかっちゃうよ……。



「…どこで聞いたぁ?」

「学校の人が話してるの聞いた…」



それきり、スク兄さんは黙ってしまったけど私の頭を撫でる手だけは止めない。



「言わなかったのは、お前に無駄な心配かけたくなくてなぁ」


「っ、無駄な心配なんかじゃないよっ!!
心配くらいさせてくれてもいいじゃないっ」



私が半ば叫ぶように言うとスク兄さんは驚いた表情をしたあと、呆れたように笑う。



「だったらお前も変な遠慮なんかしねぇで言いたい事があれば言えばいいだろぉ」


「…スク兄さん」



当たり前だけど、やっぱり気付いてたんだ…。


でも今はザンザス様の事じゃなくて未来を知っているような感覚。

これを言ってもいいんだろうか?


スク兄さんが心配してくれてる。心配かけさせたくないならちゃんと言うべき、なんだよね?



「あのね、最近私っ――」


「おーーい、スクアーロ!!!」



言おうとしたと同時に聞こえてきた掛け声に反射的に目を向けて、声を掛けられたスク兄さん本人もそちらに目を向ける。


こちらに向かってくるのは夕日の色にも負けずに輝く金色の髪の少年。

スク兄さんと比べると大分幼い。

いや、年相応と言うべきか。



その少年は迷いなくスク兄さんの元へ来た。



「よかった。まだ帰ってなかったんだな」

「なんか用かぁ?へなちょこ」

「あぁ、ヴァリアーのボスとの戦いのことなんだけどな――」

「ゔお゙ぉいっ、そんな話しは明日でもいいだろうがぁ!」



へなちょこと呼ばれた少年の言葉を遮り、スク兄さんは声を荒げる。
それでも何か言いたげだった少年が私を見た。


何故か驚いた様な表情になった少年は慌てたように言う。



「スクアーロの、妹!?」

「阿呆かぁぁっ!どう見ても違うだろうが!」

「スク兄さん、それって私のこと妹みたいに思ってくれてないってこと?」

「お前もいちいち反応すんなぁ!!」



なんだかスク兄さんをからかうのは面白い…。

なんて思ってたら金髪の少年が急に笑い出したからビックリして見ればニコニコと笑いながら手を差し出してくる。


これは握手?


私も手を差し出して握れば、ギュッと握り反してくれる。



「俺はディーノ。名前は?」


「水和です。よろしくお願いします」



ディーノさん?

なんだかどこかで聞いたことあるような?



「水和?なぁ、どこかで会ったことないか?」



ディーノさんも一緒だったみたい。



「知り合いだったのかぁ?」

「いや、知り合いってわけじゃ――――、あっ」



ディーノさんは思い出したのか、ハッとした顔で私をマジマジと見る。

見るから少しだけドキドキした…。



「覚えてないか?ボンゴレの屋敷で会ったこと」



……………ボンゴレの屋敷で?屋敷じゃなくて…―――あれ?もしかしてあの時の?
確かにディーノと呼ばれてた。


でも、会ったのはその時だけじゃない、はず。
両親のお葬式――あの時私を見ていたのは間違いなくディーノさんだ。


ディーノさんは覚えていないみたいだけど。



「私も覚えてます。お久しぶりです、ディーノさん」


「そんなに畏まらなくていいって。にしても大きくなったな」



ディーノさんは相変わらずニコニコ笑いながらナデナデと私の頭を撫でる。
スク兄さんとは違う、優しい撫でかた。



頭撫でられるの多いな、私…。



「ゔお゙ぉ゙ぉい、馴れ馴れしく触んな」

「はははっ、ヤキモチ妬くなよ兄ちゃん」

「てめぇが兄ちゃんなんて言うんじゃねぇ゙ぇ゙!」



言い合う、と言ってもスク兄さんが一方的に叫んでるだけだけど、つい笑ってしまう。


不安はまだあるけど今はまだこのままでいたい。だから、まだこの感覚を言うのはやめておこう。



きっと、いつか言う時が必ずくるはずだから―――。








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