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□07 裏Side
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いつまでそうしていたのかは分からない。でも頭を上げたら寂しい気持ちはあるけど、どこかスッキリした気分。
「ふぅ…」
さて、気持ちを切り替えてかなきゃ。
リボーンさんが居なくても修業はあるんだからね。
リボーンさんがいないとなると修業はこれから一人ですることになるんだよね?何をすればいいのか…。
明日は早めにスク兄さんのところに行こうかな。学校まで向かえに行ってみるのもいいかもしれない。
考えていると九代目が座談室に入ってきた。
九代目がこの部屋に来るのは珍しいから誰かを捜してるのかもしれない。
「水和 此処にいたのかい」
「九代目、何かありましたか?」
九代目は私の両親が死んでから水和ちゃん――じゃなく、水和――と呼ぶ。
本当の家族のように接してくれるようになってからだ。
「リボーンとはもう会ったかい?」
「はい。さっき会って、――行っちゃいました」
「そうか…もう聞いたんだね。てっきり泣いていると思ったよ」
「ふふっ、泣きそうになりましたけど、嬉しいこと言ってくれたから泣きませんでしたよ」
九代目は優しく微笑みながら私の頭を撫でる。
九代目に撫でられるのは好きだから、ついつい甘えちゃう。
「…私、泣いてばかりですよね」
「子供らしくていいじゃないか。
泣かなくなってしまったら寂しいよ」
その言葉は嬉しいけど、もう泣きたくない。
心配かけたくないし、泣かないくらい強くなりたい。
多分こんなこと言ったら九代目は、それは違う――って言ってくれるんだろうけど、これは私なりのけじめ。
そして覚悟でもある。
「実はリボーンのことだけじゃなくて、別の用件もあるんだ」
「別の?」
「ああ、明後日日本へ行ってくるよ」
日本に?九代目自身が?
また急な話しだなぁ。
「未来のボンゴレ十代目――沢田 綱吉君に会いに行くんだよ」
「…十代目…、――沢田 綱吉…」
そういえば、九代目は綱吉君が小さい頃に会っていたんだもんね。
…………………。
……待って。
今……私、何を……。
なんで、知ってるの?
知るわけないのに、なんで………。
何なの…?私、一体何を、知ってるの……。
何で誰も知るはずのない、未来を……?
「どうかしたのかい?」
「へっ…、な、なんでもないです……。
それより九代目、聞きたいことがあるんですけど」
気味が悪かったけど、そんな気持ち忘れたくて、違う話題を持ち掛ける。
最近気になってた事だからちょうどよかったかもしれない……。
「私、三年もこの屋敷に居るのに一度もザンザス様にお会いしたことないんです」
「…ザンザスか」
ザンザス様の名前を出した瞬間、一瞬だけど九代目の表情が強張った。
ほんの一瞬だから見間違いかもしれないけど……何故か心がざわつく。
「ザンザスは水和の部屋と階数が違うし、離れているからそのせいかもしれないね」
「そうですか…」
「それにザンザスはあまり人前に進んで出ようとはしないからね」
事実、ボンゴレの屋敷はかなり広いから会わないのも頷ける。
ましてや相手は九代目のご子息。
部屋だって安全な場所に配置されてるところなら私の部屋とは全く違う場所にある。
その配置から簡単に言えば別々の屋敷にいるのと変わらない。
そのせいだというのは本当なんだと思う。
「さぁ、もう休むといい。疲れた顔をしているよ」
「あ…、はい…」
なんだか、はぐらかされた気もするけど疲れていたのは本当。
お言葉に甘えて部屋に戻り、大人しく休めば直ぐに睡魔に襲われ眠ってしまった。
*******
目を開ければカーテンの隙間から光が漏れ、鳥の鳴き声が響く。
まずい、寝過ごした――そう思ったけど、もうリボーンさんはいないんだと思い出して、起こした身体をまたベッドへバフンと音を立てて寝転んだ。
いつもなら外が薄暗い状態で起きて始まる修業。
時々、修業じゃなくて勉強もちゃんとやったけど…。
普通であれば私の年なら学校に通っているだろうけど修業ばかりだし、生前の記憶がある私にとって勉強はそこまで必要性はない。
それにマフィアが普通の学校に通えるはずがない。
以前、九代目が学校へ行きたいならってマフィアの子供達が多く通う学校を紹介してくれたっけ?
あの時は断っちゃったけど、今は断らなければよかったなんて後悔。
だって、その学校は多分スク兄さんも通ってる所と同じだと思う……まぁ、学年は全く違うけど。
「はぁ、何しよう」
修業をするべきなんだけど昨日の疲れがなかなか抜けない。
それに、どのみち夕方からスク兄さんと修業するんだし少し休みたい。
「のんびりするのもいいかなぁ〜」
たまにはお休みもいいよね?
そう決めてベッドから出る。久しぶりにゆっくりと朝を過ごそう。
寝巻から私服に着替え、いつもより遅めの朝食をとる。本当にのんびりした朝で逆に落ち着けない気がする。
やっぱり勉強くらいはしようか?
昨日もリボーンさんに最後に言われたんだし。
修業にばかり専念していたからボンゴレの知識が全くない。
知っていなきゃいけないことは流石にリボーンさんに銃を向けられながら叩き込まれたけど……。
あれは本気で怖かった…。
勉強嫌いだから避けてたけど、そんな甘えはもうしちゃいけない。
……はぁ…憂鬱…。
とりあえず書庫に行こう。あそこに行けば分からないことはないもんね。
あ、でも資料室の方がいいのかな?
「う〜〜ん、どっちにしよう」
「おっ、水和ちゃんじゃないか!」
明るい声が聞こえて振り返れば、そこには手を軽く挙げてニコニコと笑っている愛美のお父さん。
今は家光さんじゃなくて秋風さんがイタリアにいるのか。
「ボーッとしてどうかしたのか?」
「はい。実はボンゴレの歴史を学ぼうと思ってたんですけど書庫か資料室どっちにしようか迷ってて…」
「そうか…歴史を知るなら書庫がいいだろうし、最近のボンゴレの動向や、本だけでは分からない実際のマフィアの動きが知りたいなら資料室がいいんじゃないか?」
歴史は大事だよね…ボンゴレの創立者であるI世や、その守護者をもっと知る必要だってある。
……けど、勉強嫌いの私にはそれが憂鬱なんだよね…。
今日は資料室でいいかな?歴史ならまた後でやればいいし!
「ありがとうございます、秋風さん。
資料室に行ってみます!」
「分からないことあれば聞くんだぞ〜」
「はいっ!!」
「……水和ちゃん、もう大丈夫か?」
「……――大丈夫です」