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□07 裏Side
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秋風さんと別れて資料室に向かえば、直ぐに部屋は見付かった。
重たい扉を開いて中に入れば既に人がいたようで、少し緊張してしまう。
何せ、今までは九代目やリボーンさんにスク兄さんくらいしか関わったことがないから初めて顔を会わす人には異常に緊張するようになった……。
両親の部下であった人は少し喋れるけど…。
引き返そうか悩んだけど、ここで引き返したらそれはそれで失礼だし嫌な印象を自ら与えたくはない。同じボンゴレファミリーなんだから尚更。
よし、頑張ろうっ!
あまり気にしないようにして目当ての資料を探そうと先にいた人物、男の人の前を通る。
ほんの少ししか見ていないけど、背が高く体格もいい。
顔はよく見なかったから分からないけど、なんだか怖い雰囲気がした。
なるべく距離を置いて調べよう……。
そう思って資料に手を伸ばしたと同時――――。
「おい、ドカス」
男の人に声をかけら、れ…た……?
これは私に言っている。だって今この部屋には私と男の人しかいない…。
「おい、聞いてんのか」
「はっ、はははいっ!なんでしょうか!?」
慌てて返事をして振り向けばバッチリと男の人が私の視界に入る。
男の人――と言うには幼く、男の子と言うには大人っぽい。
だけど、そんなこと直ぐに頭から離れた。だって、めちゃくちゃ睨まれてる!!
「この俺が居るのに入ってくるなんて、いい度胸してるじゃねぇか」
「えっ、……えっ!?」
何!?どういう意味!?
入って来たらいけなかったの!?
「カスが俺と同じ空間にいて許されると思ってんのか?」
「……あの、その…」
意味が分からない…。この人は一体何?
なんでこんなに傲慢なの?
調べ物したいだけなのに…。
「あの、でも私…勉強したくて…」
無駄だとは思うけど、一応私の理由を述べてみる。
こんな傲慢な人に言っても通用するわけない。分かってるけど、このまま意味が分からず戻るなんて納得できない。
「てめぇ、俺が誰か知らないのか?」
「はい?」
知るわけない。初めて会ったのに分かれと言う方が無理がある。
でも、こんなに偉そうで傲慢で自信ありありな態度。
ボンゴレ内でも、かなり偉い地位にいるのかもしれない……。
だとすれば私はかなり失礼な事をしていることになるけど…。
だんだんと顔が青ざめていくのが自分でも分かる。
どうしよう…謝ったほうがいい?
けど、誰かも分からないし謝りようがない……。
そんなことを延々と考え込んで黙っていたせいか、男の人は私の目の前まで来て言葉の通りカスを見るような目で見下ろしてきた。
ビックリして怖くて身体が動かない。
ただただ、目の前の人を見上げることしか出来ない。
彼が口を開いたから何を言われるかと身構えたけど、開いた口が徐々に閉じていく。
何だろうと、顔を見ると彼は私の首元を見て驚いたように目を見開いてる。
つられて首元を見れば、そこにあるのはリング。
九代目に大事に持っておくようにと言われていた雪の結晶が刻印されているリング。
「てめぇ、氷月 水和か?」
「そう…ですけど…」
何で私の名前を知っているんだろう?
リングを見て驚いたってことは何か知っているのかもしれない…。
「ふん、お前がじじいのお気に入りか」
「……なんのことですか?」
じじい?お気に入り?
意味が全く分からないから余計に気になるし、それになんだか少しムッとする。
「その使えねぇ頭に叩き込んどけ。俺はザンザスだ」
「……ザン、ザス……さ、ま…」
ザンザス―――。ザンザスって………。
……九代目の……ご子息じゃ……。
「ザンザス様!?」
気付いて声をかけた時には、もうザンザス様は部屋から去った後で、結局何も聞けず仕舞いだけじゃなく無礼をしただけ……。
かなり印象最悪じゃん!私っ!!!
「もう……、馬鹿すぎる…」
落ち込んで椅子に座るとザンザス様が調べていたのか色んな書類が散らばってる。
何となく一枚手に取り目を通せば、書かれていたのは九代目とザンザス様のことばかり。
ザンザス様は何を調べていたんだろう?
「水和ちゃん!いるか?」
扉の向こうから聞こえた声は秋風さん。
「どうかしましたか?」
秋風さんは焦ったように中に入ってきた。
「此処で誰かに会ったりしたか?」
「え?……い、いえ」
何故か嘘をついた、ついてしまった……。
ザンザス様と会ったと言えなかった。
秋風さんの表情からすれば多分会わせたくなかったんじゃないかなって思ったから……。
「そうか……ならいいんだ。
水和ちゃん、勉強中なのにすまないが今日は書庫で勉強してもらっていいか?」
「…わかりました」
そのまま資料室から出て真っ直ぐ書庫に向かう。分からないけど胸が凄くドキドキしてる。
私は見てはいけない物を見てしまった気がしてならなかった。