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□06 表Side
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表Side


水和と再会してから二年。あれから連絡はちゃんととっていて、私が護身術を学んでるんだってことを報告した時は驚いてた。


「マフィアになるの?」って聞かれた時、私はなるとは答えられなかった。正直、まだマフィアとして人生を過ごす覚悟はない。

パパと同じように門外顧問を目指すならマフィアになる理由はある。
でも私はそんな理由じゃなくて幼なじみのツナ。

大切なツナの為に出来ることをしたい。



まぁでも、護身術を学んだ時点でマフィアになる事を考えてないわけじゃない……。
それに二年もパパや家光さんに稽古してもらってるからそれなりに身についたから活かせる事をしたいとは思うし。



「愛美ちゃん、今日の稽古はお休みにしよう」


今はパパがイタリアに居るから家光さんに稽古をしてもらってる。そんな日常に言われた家光さんからのお休み。


「いいんですか?」

「あぁ。たまには、ゆっくり休むんだぞ?」


休みは嬉しい。けど急に空いた休日をどう過ごすか……。

最近は稽古ばっかりだったから休日をどう過ごせばいいのか分からなくなる。

慣れって怖い。


部屋でぼーっとしてるのも勿体ないからリビングへ行こうかな?多分ツナいるだろうし、久しぶりに一緒に遊ぼっかな。



一階に降りて、リビングへ入ると直ぐに奈々さんが私に気づいてくれた。


「あら、愛美ちゃん。今日はお出かけしないの?」

「はい。今日は家に居ます」


稽古をしてる事を奈々さんは知らない。

護身術を習ってるって正直に言えばいいだけなんだけど……一応今の私は子供なわけで、奈々さんの性格上、絶対心配しちゃうだろうし、止められるのは想像がつく。
――それに奈々さんには私が以前の記憶があるのを言ってない。


家光さんから奈々さんには言わないでほしいって頼まれたから。



「最近手伝えなかったから、今日はお手伝いしますね!」

「ふふっ。ありがとう。でも、お買い物ぐらいしかないからあの人に頼むわ」


奈々さんが家光さんに顔を向けて目に写ったのはイビキをかきながら寝ている(寝るの早っ)家光さんに、すやすやと隣で寝てるツナ。


その微笑ましい姿を見れば起こすのは気が引ける。その気持ちは私と奈々さんも一緒だった。


「買い物、私が行きます」

「でも…、大丈夫?」

「大丈夫です!直ぐ帰ってきますから」

「…じゃあ、お願いしようかしら。
くれぐれも気をつけてね?」



買い物リストとお金を預かって家を出て、スーパーに向かう。その途中にいつも私が稽古をしてる場所がある。


そこは住宅街のはずなのに大きな家が一件あるだけで他の家は近くにない。
まるで、この家の周りを避けて建てられたんじゃないかって思うくらい。

そのお陰で人通りもなくて、誰にも見られる心配がないから稽古場所として助かるんだけど。


ふ、と表札を見ると『雲雀』と書いてあった。


雲雀さん、か……どんな人が住んでるんだろ。


大きな家の前を通り過ぎようとした時、何かが向かってくる気配がして、その何かを咄嗟に掴んで受け止めた。


「っ!!――トンファー?」



何でこんな物騒な物が?

トンファーが飛んできたのは大きな家の庭から。


目を向けると、男の子が漆黒の髪を靡かせ、凛とした目で私をジッと見る。
その目は期待に満ちてる気が……した。


――この子がトンファーを投げたの?

トンファーが飛んできた感じからして、遊んで飛ばしたとは思えない。

でも私の考えすぎかもしれないし……。



「これ君の?」

「………………」


トンファーを差し出しても男の子は、ただ私をジッと見てるだけ。

けど、ほんの一瞬――――。


「わっ!!!」


男の子が急にもう片手に持ってたトンファーで私を殴りつけてきた。

殴りつけてくる瞬間に空気が少し変わったお陰で、避けることが出来た。


すぐに男の子から距離をとって、まだ自分が持ってるトンファーを構える。



「どういうつもりっ!?」

「……きみ、いつもけいこしてるよね」

「っ!?」


まさか、こんな小さい子に見られてるとは思わなかった…。
パパも家光さんも誰にも目につかない場所を選んでくれたはずなのに……。


「ねぇ、ぼくとあそんでよ」



疑問符なんてない。本当にやるつもりだ。


それに私でも分かる。この子はまだ私とそんなに年が変わらないはずなのに、強い。

正直、威圧だけで手に汗をかいてしまうくらい……。


「ぼくからいくよ」



でも私だって……。

私だって稽古をしてきた。勝つのは無理かもしれないけど、隙を作って逃げるくらいはできる…はず……。


男の子は加減なんてするはずもなく、トンファーを容赦なく振るう。

何とか避けたり、時々トンファーで受け止めたりの繰り返し。攻撃が止まないから隙を作ることが出来なくて内心凄く焦ってる。



「にげるだけなの?つまらないよ」



追い込まれてく…、このままじゃ……。


…――ダメダメ、落ち着いて。こんな時こそ落ち着かなきゃ。


この子はただトンファーを振るうだけ。


私を倒そうとするだけの戦い。狙ったり、戦略的な物は感じない。

だから、不意をつけば―――いけるっ!!!


「はっ!!」



彼が振るった一撃を大きく避けて屈み込み、そこから空いた距離を一気に詰めて、下からトンファーを振り上げる。

こんな戦い方すると思わなかったみたいで驚いた表情になった。けど簡単に避けられる。
直ぐに攻撃してくると思って構えても、男の子は考え込むように自分のトンファーを見てるだけ。


「――?」


「……そっか。そんなたたかいかたもあるんだね」


……相手が次どう出るか、自分がどう攻撃をすれば隙を与えないか……その考え方の戦いを言ってる、のかな?

男の子は私を見るとニコリと笑う。
その笑った顔にドキッとしてしまったのは、きっとびっくり……したから。



「きみ、おもしろいね。またあそぼうよ」

「えぇっ!?」


この子の遊ぶは戦うこと??かなり恐ろしい子……。



「じゃあ、もういっかいあそんでね」


男の子は、またトンファーを構える。

え?まだやるの?

私、色んな意味で疲れたし買い物、に……。



「ああぁぁぁっ!!!!買い物行かなきゃ!」


すっかり忘れてた!あれから大分経ってるし絶対奈々さん心配してる!

驚いてる男の子にも構ってる時間がないから慌ててトンファーを返す。


「私もう行かなきゃいけないから!またねっ!!」

「へっ……?」



状況についていけてない男の子をそのままに私は走って、その場を去った。




その後、帰りが遅かった私を心配して家光さんが迎えに来て、家に戻ればツナが泣いて抱き着いてきて、奈々さんにも心配されて……。

心配かけてごめんなさい……。







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