short
□キズ
1ページ/1ページ
あの時は傍にいるのが当たり前で普通のことだと思ってた。
君は僕の隣にいて笑って手を繋いで抱きしめて。
君の体温も感触も覚えてる。
忘れることなんて出来ない。
忘れたいと思っても忘れられない。
君はいつも僕の心に、脳裏に焼き付いてる。
どうして手を離してしまったんだろうか?
どうして傍にいるのが当たり前だと思っていたんだろう?
君は傷ついて泣いていたのに…。
僕は気づかないで、君の心をナイフで引き裂いてた。
初めて愛しいという感情を教えてくれた人だった。
いつも隣にいても心地いいと思えた。
いつも隣にいてほしいと思えた。
どんなに願っても思っても君は僕の隣に来ない。
こんなに苦しくなるなら僕の記憶から消えてよ。
―――恭弥―――
不意に君の声が聞こえて、振り返れば泣きそうな笑顔の君がいた。
〜End〜