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□キューピッド
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「天誅っ!!!!!」

「クフンッ!!」



骸の身体は綺麗に宙を舞い落ちていく。

そして頭から地面にぶつかり、ピクリとも動かない。
だが、それを気にする人物は此処には誰もいない。


皆が皆、もう慣れたとでも言うように各々好きなことをしている。



「一生そこで寝てろ!!この変態がっ!!!!」



水和がそれだけ言い残し、その場から離れようと踵をかえす。が、何かが水和の足首をガッと掴み歩みを阻む。


それが何なのか見なくても理解し、もう片方の足を振り上げようとしたが……。



「クフフ。水和の今日の下着は黒ですか。

誘っているのですね?いいでしょう!今すぐベッドに行きましょう!!」



骸は鼻息を荒く、頭をぶつけたせいなのか、下着を見たからなのか鼻血がでている。



「下着見ただけで何でそんな解釈になるんだ!?腐れナッポー!!」



振り上げ途中だった足を思いっ切り振り下ろし骸の顔面に直撃する。



「グフゥッ……くっ水和の為でしたら僕はMにもなりましょう」


「何の話しだ!?何の!?」



何をしても骸は諦めない。むしろ何故かエスカレートしていく。



「水和。もう骸様なんて放っといて私と一緒に出掛けよう?」


「クローム……そうね。気分転換にそうしようかな」


「さっさと行け。そうすりゃ静かになる」



今まで傍観していた獄寺が手をシッシッとするように動かす。



「あんたねぇ…、てゆうか!!黙って見てないで助けようとか思わないの!?あんた達!」


「いやー見てて楽しいからつい、な?」

「何で助けてやらなきゃいけねぇんだよ」

「……めんどくさい」

「極限に好かれていていいではないか!!」

「すみませんがオレはノーコメントで」

「もう、うざいから付き合っちゃえばいいんじゃない?」

「たまには良いことを言いますね。沢田 綱吉。

そうです。付き合ってしまいましょう水和。いえ、結婚しましょう」

「お前は黙れ。

つまり皆助けるつもりはないってことね…」



ランボに至っては、とばっちりを受けたくないのかノーコメント等という返答。
皆の反応を見て、諦めたのか水和はため息を吐く。



「大丈夫。水和は私が変態から守るわ」


「っクローム!!大好きっ!!」


「うん。私も水和が大好き」


「クローム。今僕をさりげなく変態呼ばわりしましたか?」


「いいえ、骸様。
さりげなくじゃなくハッキリと言いました」



骸とクロームの間に火花が散り、黒いオーラ、ブリザードが吹き荒れる。

いつからこの二人はこんな関係になったのだろうか……。



「水和。早く行こう」


「う、うん」



流石に水和もこの雰囲気に気圧されたのか冷や汗をかき、大人しくクロームに着いていく。



「ちょっ、僕はスルーですか!?」



そんな骸の叫びもクロームによって無視され二人は出掛けて行った。






******





「はぁ…何で骸はあんなに変態なの」


「前はもう少しマシだったのにね」



クロームの言う通り十年前はもう少しまともな人物だった―――と思いたい。



「私に平穏は訪れないのかな…」



骸の変態行為は時も場所も選ばない。
何故か夜中に鍵の掛かった部屋に侵入してきたり、入浴中であったり。


朝起きたら隣で寝ている時もあった。
その時は何かされたかと本気で水和は焦った。




「大丈夫!私がいる限り絶対骸様に変なことされないように守るから」


「ふふっ、ありがとう」



水和はクロームの頭を撫でると頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。



「(でもね、本当は私知ってるよ。水和は骸様のことが好きなの。
骸様は気付いてないけど)」



クロームは何処となく寂しそうに嬉しそうに笑っているが、前を向いている水和は気付かない。



「(その気持ちを水和が認めたくないことも知ってる。それに……)」



クロームは水和の手をギュッと握れば水和も笑って握り返す。




「(後もう少しだけ、私に水和との時間を独占させて下さい。骸様)」




骸と水和が互いの気持ちを確認して付き合うのも時間の問題かもしれない。


クローム髑髏というキューピッドの存在によって――――。






〜End〜


「そういえば、骸。今日は何をして殴られたの?」

「些細な事です。水和の下着を拝借しただけなんですがね…」

「何の為に拝借したのかは聞かないでおくよ……(水和が可哀相になってきた…)」







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