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□04 表裏Side
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裏Side
いつの間にか私の手の中に現れていたリング。それは中央に雪の結晶が描かれている物。
いつ何処で拾ったのか?そもそも拾ったのかさえわからない。
何となく持ち歩いているだけで、あまり気にしなかったけど最近は何故か違和感を感じるようになってきていて無視できない。
「九代目。今お時間ありますか?」
「どうしたんだい?水和ちゃん」
今日は、というよりも毎日修業をするため今はボンゴレの本拠地であるこの屋敷で過ごしている。
そのため父と母とは離れて暮らすようになった。
「私が九代目と初めてお会いした日に気付いたんですけど、いつの間にかこのリングを持っていたんです」
「ん? これは…」
リングを見せると九代目が驚いた表情になるので私もつい驚いてしまう。
九代目が驚いたのにもビックリしたけど、その表情でこのリングはただのアクセサリではないと分かったから。
「まさか…このリングが現れるとは…嫌、生きているうちに見ることが出来るなんて…」
「っ?九代目?このリングは?」
九代目は私を見遣ると複雑そうな表情になりため息をつく。
「まだ君には早い。早過ぎるんだ」
「早い?」
「君はまだ五才。こんな事に巻き込むなんて…」
九代目は悲しそうに、苦しそうでもあって見ている私が苦しくなってしまう。私が九代目にこんな顔をさせてしまっているんだろうか…?
まだ九代目と過ごして一週間と少し程度だけど九代目という人を少しは理解してる。
とても優しくて思いやりがあって、部下思いで暖かな人。まるで……。
そう、まるで大空のような大きい人。
自然に私は九代目を護りたいと思うようにもなってきていた。
「水和ちゃん。今はまだ説明する事はできない。だが、必ず話すことが来る日がある」
「…………はい」
「それまで待っていてほしい。だから今は修業に専念するんだ」
「…………」
正直気にならないと言ったら嘘になる。でも今は話す時じゃない。
必ず話す時がくる。だから私はそれまで大人しく待とう。
きっと、そうすることしかないんだろうしね……。
「わかりました。今は修業に専念します」
「あぁ。…ありがとう」
とにかく今は九代目の言う通り修業に専念するため、いつも私が修業している場へ戻る。
九代目の部屋から出た時、私と反対側の通路から誰か来ていたみたいで一礼してからその場を去った。
私の修業を見てくれているのは最強のヒットマンと呼ばれるアルコバレーノ リボーンさん。
どうしてこんな凄い人が私の修業をしてくれるのか不思議だったけど、どうやら九代目がリボーンさんに頼んだらしい。
「リボーンさん、お待たせしました。修業の続きお願いします」
「おう。早速始めるぞ」
私は父と同じ武器。鎖で繋がれた日月風火剣、分かりやすく言えば円い形をしたリング剣を構えて修業を再開した。
「水和っ!!!」
と、同時に屋敷から私を呼ぶ声。
懐かしくて、また会いたいと、でももう会えることはないと思っていた声。
この声は間違いなく――――――。
******
表Side
イタリアへの出発を決めてから一週間。
私は今飛行機の中。イタリアへ向かってる最中。
勿論、パパも家光さんも一緒に…リングを持って。
「緊張してるか?愛美」
「うぅん。今は大分落ち着いた」
飛行機に乗って12時間以上経つから、そろそろイタリアに着くかな?
不思議だなぁ……最初は怖くて不安ばっかりだったのに今は自分でも驚くくらい本当に落ち着いてる。
ネックレスみたいに下げてたリングを改めて見る。見た目はただのリングでどこも可笑しい所はない。
でも、このリングがイタリアへ行くきっかけを作った。
一体このリングは何なんだろう。
「さぁ、愛美。行くぞ」
「あ、うん」
飛行機から降りて、空港を出れば誰が見ても分かるくらいの黒い高級車が停まってて、つい凝視した。
車の前には恐そうな男の人が立ってて慌てて目を逸らそうとしたらパパと家光さんは迷うことなく、男の人に近づいた。
パパを引き止めようとしたけど、私が声を出すより早く男の人が口を開いた。
「お待ちしておりました。車のご用意は出来ております」
「ああ。すぐに出してくれ」
普通に話してる…それどころかパパに対して敬語で頭まで下げてる…家光さんもいるから家光さんにも頭を下げてるんだろうけど……。
ますます分からない。パパは何者なの…?
車に乗り込めば人気のない道を走り続けてく。
周りの景色も変わり始めて木々に囲まれた道になった。
木々の道を抜けると立派なお屋敷が建ってて、門の前で車が停まるとパパに手を引かれて降りる。
そのまま進んでけば大きな玄関を通り過ぎ長い通路。
流石に話す雰囲気じゃないからパパ達の後を着いてく。
それから一際大きな扉が見えてきて、その中からら小さい女の子が出てきた。
遠目だから分かりにくいけど私とあんまり年は変わらない女の子がこっちを向いて一礼してから反対側の通路へ消えていった。
あれ?と思った。何となくさっきの女の子が気になっていつまでも女の子が消えてった通路を見てた。
「九代目。家光と秋風です。失礼します」
「愛美 行くぞ」
さっきの女の子が気になったけど、パパに呼ばれて大きな扉の中へ入れば優しそうなお爺さんが私達を見て微笑んでいる。
「九代目。お電話でお話した私の娘の愛美です」
パパに紹介され前に出ると、九代目って呼ばれた人は微笑みを消さないまま問いかけてきた。
「愛美ちゃん 君が持っているリングを見せてくれるかい?」
「は、はい。これです」
リングを首から外してお爺さんに見せれば顔をしかめて、難しそうな表情になった。
「まさか、二人も現れるとは…」
二人。現れる。意味が分からなかったけどただ事じゃないんだって、目の前にいるお爺さんを見ればそれくらいわかる。
「愛美ちゃん。済まないが今はまだ説明することはできない。お父さんの仕事もだ」
「……どうしてですか?」
「まだ君は幼すぎるんだ。もう少し大人になれば必ず説明する時が来る。それまではそのリングを無くさないよう大事に持っているんだ」
ここまで来たのに肝心な事は分からないまま。
目の前にいるお爺さんは優しく言ってくれてるけど微かに感じる威圧感に聞くことが出来なかった。
「わ、かりました」
「すまない。本当は聞きたいだろうけど今は我慢してほしい」
そうして部屋から出た。
お爺さんはせっかく来たのだから二、三日ゆっくりしていけばいいって言ってくれて、私のために用意してくれた部屋に向かう。
ガッカリしながら部屋へ向かってる時に、窓から見えた風景。
さっき見掛けた女の子が広い庭にいた。
どうして?どうしてさっき気づかなかったんだろう?
だってあの子はっ!!
どんなに小さくても分かった。あの子は間違いなく―――――。
「水和っ!!!」
気づけば叫んでた。