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□03 表Side
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表Side


「愛美ちゃ〜ん。ツー君起こしてもらえるかしら〜?」

「は〜〜い」


奈々さんに言われ、ツナを起こすため二階へと歩きだす。
ツナを起こすのはもう私の役目と言っていいほどにいつもの日常になってたりする。


「ツナ!!朝だよ、起きて!!」

「………ん〜」


耳元で大きな声を出してもツナは生返事しかしなくて、起きる気配は無し。
仕方なくそこら辺に放り投げてある玩具を拾って思いっきりツナの頭をひっぱたく。


「いたっ!!もう、まなみちゃんはいつもらんぼうだよぅ」

「直ぐに起きないツナが悪いんだよっ」


こんな会話も一体何回目だろう?私が沢田家にお世話になって一年は経つ。
それもこれもパパが仕事が忙しいからと私の面倒を家光さんと奈々さんに頼んだから。

と言っても家光さんも忙しいから滅多に家にはいないけど…。


私とツナは現在三才。生まれた時から家が隣同士だから幼なじみってとこかな。
ツナは当たり前だけど三才らしく子供。私はといえば生前の記憶があるから他の子より大分精神面は大人。
まぁ、そのお陰で奈々さんには頼まれ事をされるから力になれるのは嬉しいんだけどね。


でも、一番驚いていたのはパパ。三才にしては大人すぎるせいか前は不安な表情が絶えずにいたけど、早くにママがいなくなって、他所の家に預けられていた環境のせいだと思ったのか最近は不安な表情はしなくなったけど異常な程の過保護になった…。


「ほらツナ、ご飯食べに行こう」

「…うん」


相変わらず眠そうに目を擦りながら、転ばないようにするためなのか私の手をギュッと握る。
あぁ、本当に可愛い。

こんな幼なじみを持って幸せだなぁ〜なんてウキウキ考えながら奈々さんが待っているリビングへ急ぐ。






ご飯を食べてると奈々さんが嬉しそうに笑いながら私とツナにある報告をしてくれた。


「今日ね、愛美ちゃんのお父さんから電話があって二人とも明後日帰ってくるそうよ」

「二人?家光さんもですか?」

「ええ」


二人一緒に帰ってくるのは珍しい。私のパパが帰ってくれば家光さんがパパの代わりに仕事してるし、その逆も然り。


「ツナ よかったね!パパ帰ってくるよ」

「うんっ」

ツナも嬉しいみたいで満面の笑みで頷ずいてくれた。
来週には帰ってくる二人の為にも、ご馳走を奈々さんと作ろうと決めれば今から楽しみで明後日がとても待ち遠しい。
待ち遠しくて、その日一日が長く感じる程だった。




******




パパと家光さんが帰ってくる前日。私は奈々さんとツナと一緒に明日の為の食材を買いにスーパーへお出かけ。

そのスーパーの中でツナがお菓子コーナーではしゃいでたと思ったら急に不安な顔になって私に疑問を問い掛けてきた。


「まなみちゃん…おとうさんたちはなんのおしごとしてるんだろう…?」

「……………」



私はツナの疑問に答えなかった。答えられない。だって私も知らないから、私だって知りたい…。
聞こうと思えば聞けた。聞く機会だって沢山あった。でも私は聞けなかった。

聞くのが怖かった。聞いたら引き返せないような、今までとは違う日常になってしまうような…そんな気がした……。




*******




こんなモヤモヤとした気持ちを抱えたままパパが帰ってくる当日。

正直会いづらい。


そんな私の気持ちとは関係なく時間は進んで、料理も出来上がり、あとは二人が帰ってくるのを待つだけ。
チラリとツナを見れば昨日見せた表情はなくて、家光さんが帰ってくるのが本当に嬉しいようでニコニコと笑ってる。


よかった…もう不安な顔してないや。

安心したと同時に玄関の扉が開き賑やかな声が家中に響き渡る。


「奈々〜ツナ〜帰ったぞ〜!!」

「愛美〜〜〜元気か〜〜!!パパが帰ってきたぞ!!!」


会いづらいと思ってた私の気持ちはパパによって見事に打ち砕かれたのは言うまでもなく…。あんなに気まずく思ってた私は馬鹿みたい……。


「お帰り。パパ」

「愛美〜〜寂しかったか!?パパは物凄く寂しかったよっ」


テンションMAXでリビングへ入ってきたと思うのもつかの間パパは勢いよく私に抱き着きほお擦りし、デレデレ状態。
正直止めてほしいとか思わない訳じゃないけど…。
でも、そのお陰でさっきまでの気まずさはなくて普通に接することが出来たことは心の中でこっそり感謝した。



「ほらパパ、奈々さんと私で一生懸命作ったご飯食べて!」

「おぉ〜愛美も作ったのか偉いぞ偉いぞ!」



今度は抱き着きながら頭をワシワシと撫でる。正直加減が下手だから少し痛い…。
でも急に離れたから何だろう?と思って見てみると奈々さんと向き合う。



「奈々さん、いつも愛美の面倒有難うございます。ご迷惑掛けますがよろしくお願いします」

「あらあら、気にしないで下さい。愛美ちゃんはしっかりしてますから色々手伝ってもらって助かってるんですよ」


こうやって真剣なパパを見ると大人だなぁとか、カッコイイって思うけど仕事の時の影が脳裏にちらつく。



「さぁさぁ、せっかくのご飯が冷めちゃうわ。食べましょう」



奈々さんの一言で皆ご飯を食べ始め、久しぶりの賑やかな食卓。相変わらずパパは私にベットリだったけど本当に楽しい時間。



「パパっ寝るなら自分の家に帰ってからにしてよ!!」


パパは家光さんといつものように盛り上がりお酒のペースも早くて言うまでもなくベロベロに酔っ払い二人してリビングで雑魚寝。
もう、恥ずかしくて仕方ない……。


「いいのよ愛美ちゃん。二人には毛布掛けておくから今日も此処に泊まっていって」

「すみません…お願いします…」


申し訳なく思いながら沢田家に用意されている部屋へ戻ると、机の上に見慣れない物が目にはいる。
手に取って見るとシルバーのリングで中央には雪の結晶が描かれているデザイン。


パパが買ってきてくれたのかな?それにしては私の指にはブカブカでサイズが合ってない…。
流石に指のサイズが分からないにしてもここまで大きいと合わないって分かると思うんだけど…。とりあえず明日聞いてみよう。






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