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□03 表Side
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「まなみちゃん。あさだよっ、おきよう?」
「んぅ〜〜…ツナ?」
身体をポンポンと叩かれる感触を感じて、目を向ければニコニコ笑ってるツナが私を見てる。
珍しいこともあるんだなぁ…。私がツナを起こすのはあっても起こされたことは一度もなかったのに。
とにかくツナが起こしに来てくれたんだし、起きよう。
「おはよう、ツナ」
「うん!おはよう!おとうさんたちもおきてるよ」
どうやら私が一番最後に起きたらしい。
「着替えるからツナは先にリビング行ってて」
「うん。はやくきてね!」
私は早めに着替えを済ませて、昨日机の上にあったリングを手に取りリビングへ降りる。
「おはよう愛美ちゃん。ゆっくり眠れたかしら?」
「おお、おはよう愛美ちゃん」
「おはようございます。家光さん、奈々さん。すみません…。お手伝いできなくてっ」
「気にしなくていいのよ、愛美ちゃんにはいつも手伝ってもらってるもの。それより久しぶりにお父さんとゆっくりしてね?」
「はいっありがとうございます!」
ちょうどパパにリングの事を聞きたかったから甘えることにして私はパパに声を掛けた。
「パパ おはよう」
「おぉ〜愛美 おはよう!今日も可愛いなっ」
パパの発言はスルーしてリングを差し出し尋ねる。
「これパパがお土産に買ってきてくれたの?」
「ん?お土産?どれだ………っ!!」
リングを見るなりパパの表情が変わった。ひどく驚いているようで、暫くリングを見てると私に真剣な様子で向き合う。
「愛美。このリングどうしたんだ?」
「へっ?つ、机の上にあったけど…パパが買ってきてくれたんじゃないの?」
「……………」
それきりパパは黙っちゃって、私も声を掛けようにも掛けられる雰囲気じゃなくてオロオロするしかない。
「愛美。そのリングを持って待っててくれ」
「う、うん…」
そう言うと奈々さんと話していた家光さんに何事か話を掛けると二人は二階に上がっていった。
パパに待っていろと言われた手前何もすることが出来ず、ただパパが戻ってくるのを待った。
それから程なくして二人は二階から降りてきて、家光さんもパパも私のところに迷うことなく近づくと……。
「愛美 すまないがパパと一緒にイタリアに行ってくれ」
「……イ、イタリア…に?」
「心配しなくていいんだ。ずっと、と言う訳じゃない。ただ二、三日でいいんだ」
何を言えばいいのか分からない…だっていきなりイタリアに行くなんて……。それにパパも家光さんも今まで見たことないくらい真剣な表情で凄く怖い…。怖いよ……。
「怖がらなくていい。ただそのリングを持って、会ってほしい人がいるんだ」
「本当にそれ、だけ?」
声が震えてるのが自分でも分かる。怖くて不安で会ってほしい人さえ怖い人に思えた。
「大丈夫だ。パパも家光も一緒にいるから」
「一緒に?」
「そうだよ。愛美ちゃん一人じゃないから大丈夫だ」
一緒に。その言葉が気になった。もしかしたら、パパ達の仕事に関係してるかもしれない。
パパ達が何の仕事をしてるのか分かるかもしれない。
そう思って私は自然に口にだしてた。
「それはパパ達の仕事に関係してるの?」
聞けば二人は黙ったけど、直ぐに答えてくれた。
「ああ。関係あるよ」
こんなに早くパパの仕事を知ることが出来るきっかけがあるとは思いもしなかった。
でも、こんなチャンス二度とないかもしれない。
それなら私の答えは一つ。
「私、イタリアに……行く」
イタリアで会う人はどんな人なんだろう。そしてパパ達の仕事。
いつの間にか不安じゃなく期待が生まれた。
何となくイタリアで良いことがあるんじゃないかって気がした。