ちょっくら世界を救ってきます。
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「す、すいません……!る、いさん!私もう……」
「琴里っ」
「わ、私の事なんかかまわず……行って、ください……役立たずで、本当に、ごめんなさい……」
「琴里……あなた……!
少しは運動しなさいよ!」
5,戦闘ですよ!
私たちがなぜこんな会話をしているのかは約三分前に遡る。
さっきの黒髪の女の子の元へお札もどきを貼りに行こうと私たちは近づいた。でも黒髪の女の子がそれに気づいて逃げ出してしまったので、それを追いかけ私達も走り出したのだ。
しかし、運動をまったくと言っていいほどしてないせいで脂肪がたっぷりついている体でずっと走り続けられるはずもない。私はすぐに疲れ地面にへなへなと座り込んでしまった。
ルイさんは大きく口を開き叫ぶ。
「ちょっと!アレモレもうあんな遠くへ行っちゃったじゃないの!」
「ご、ごめんなさい!すいません……」
「……あなた……少しは体動かしたら?」
「あ、あの、一応高校の行き帰り徒歩なので……歩いてます。10分くらい」
「よし、今日から毎日走りましょうか」
恐ろしいほど笑顔でルイさんは言う。
ほ、本当にすいません……私がうなだれていると腕をガシッと掴まれる。驚いて顔を上げると、そこには余裕のない顔のルイさんがいた。
「ごめんね、琴里。休んでる暇なんてないの、アレモレ見失ったら終わりだわ」
「え、あ、」
「今から私のペースで走るから、しっかりついて来てね」
途端、グンッと引っ張られる体。
痛い痛い痛い痛い!
ちょ、腕が引きちぎれそうなんですけど!
物凄いスピードで景色が移り変わる。たくさんの人で賑わっていた商店街から人通りのまったく無い場所へ。コンクリート造りの道から砂利道へ。どこをどう走ったのかはまったく分からなかった。ていうか、走りすぎて気持ち悪い。
「……る、ルイさん……い、つまで……走……」
「……そうね、ちょっとここまで逃げられると鬱陶しいわ」
「…………」
「琴里、今からちょっとアレモレの動き封じるから」
会話の間も休む事なく動き続ける両脚。
え、どうやって……そう言う私の言葉も聞かぬうちにバッと私を掴んでいた手を離す。いきなりの事だったので足が止まらず思い切り地面に叩きつけられた。
顔面が痛い。
地面を蹴る音がしたので私は仰向けになる。もう立てる力が残っていなく息を整えながら私は上を見た。
そして見えたのはルイさんが宙に舞い上がってる光景。どうやらジャンプして空を飛んだようだ。近くにあった巨木と同じくらい高く飛んでいたから相当の高さで飛んでいるだろう。
……ん?飛ん……?
……人間ってあんな高さまで飛べたっけ?……あぁ、天界から来たから……え、そうなの?
「…………」
無言でくるんっと宙を一回転してかかと落としを黒髪の少女に決める。
え、ちょっと待って。
女の子物凄い勢いで地面に叩きつけられたんですけど。
うつぶせで痛みに悶える少女の背中に休む事なく振り落とされる足。
ゴリッと嫌な音があたりに響き渡った。
私はハッとし叫ぶ。
「…………!ルイさん!ダメです!止めてっ!」
「どうして?」
ゆっくりと少女から視線を外し私を見る。
その瞳には何も写っていなかった。