ちょっくら世界を救ってきます。
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「……え?」
「いや、だから、この服を着て戦いなさいって言ってるの」
3,フリフリですよ!
窓の外から眩しいくらいに太陽の光が降りかかってくる昼下がり、バーンと効果音がつきそうなくらい勢いよく目の前に突き出されたソレ。昨日私の家に転がり込んできたルイさんは自信満々にほくそ笑んでいる。
ちなみに今の私の顔は真っ青だろう。私は手を左右に大きく振り、即答する。
「いやいや!え、無理です無理です!すいません!」
「なーに言ってるのよ。正義のヒーローだからこれくらい当たり前でしょ。よくアニメでも変身してるじゃない」
いやでもここは現実であって……。
私はルイさんの手に握られているものを見る。
丈が短いフリッフリのスカート。胸には大きなピンクのリボンがついていて肩には肩を覆うようにレースが縁取られている。
ルイさんはこれを着ろと言っているのだ。
……いや、無理ですよね。
目を輝かせて更にその服を突き出してくるルイさん。
「本当は何か呪文を唱えたらピカーって光って服が変わるようにしたかったんだけど……この世界じゃ無理だったわ」
「い、いやいや!無理でいいです!てか着ませんからね!?」
「え!?これ着て戦ったらもう最高よ!?皆の注目の的だわ!」
「確実に皆のドン引きの的の間違いですから!」
「……む、なによ。せっかく夜なべして作ったのに」
「……う、」
シュン、とうなだれるルイさん。ちょっと罪悪感があるがやはりここだけは譲れない。
あんなものを着て街中を出るなんてそんなの逆立ちでこの街を一周したほうがマシだ。
「す、すいません……。でもこういう可愛らしい服はアニメだからこその良さでして……。あの、それに、こんな可愛らしい服なのに私みたいな不細工が着たら気持ち悪い服になってしまいますから……すいません。」
だんだん語尾が小さくなっていく。冷や汗が流れていくのが分かった。
うわ、こんなに話したの久しぶりだな。話し方変じゃないかな。
ルイさんは黙って私の方をまじまじ見ていた。
え、やっぱり話し方おかしかったのかな。
すると身を乗り出しさっきより少し大きい声でルイさんは言った。
「あなたもっと自分に自信持ちなさいよ!そんなに自分をブスだとかウジ虫だとか言ってれば本当にそうなってしまうわ!」
「え、いや誰もそこまで言ってないんですけど……」
「ねぇ、知ってる?この世に本当に不細工な人なんて誰一人いないのよ。」
ルイさんは優しく微笑みながら語りかける。
でもなんだろう、この違和感。これは私に言ってるのではなくて……。
「私はあなたを不細工だとは思わない。むしろ可愛いって思うわ。本当に不細工な人が、1人にでも可愛いって思われると思う?」
「…………違う」
違うよ、そんなの。
「そんなの……ルイさんが美人さんだから……言える事、です」
美人な人に、不細工な人の気持ちが分かるものか。
私は自分の体を見る。
さんざん自分を甘やかし、たぷんたぷんに贅肉ののったブヨブヨの体。
ルイさんが長い溜め息をついたのが分かった。
ごめんなさい。調子にのってしまって。
「……そう。でも、努力も何もせずに自分を不細工だと嘆くのはやめなさい」
「ごめんなさい……」
「そんな謝らないで。自分の意見を言うことがそんなに悪い事?」
「すいません」
「いや、あのね?」
ルイさんは苦笑する。
あぁ、優しいなこの人は。
すると、何かを思い出したように笑顔でハッとし手を叩く。