ちょっくら世界を救ってきます。

□4
2ページ/2ページ




「…………」

「え、なに……」


ルイさんと共に戻ってきた商店街。しかし、さっきとはまったく違う光景がそこにあった。
ここからではよく見えないが、ある一点に集まる人々。その人々から聞こえる声は悲鳴に近い叫び声。


「え、今何がおこったの!?」

「由梨子!……由梨子!」

「とにかく誰か救急車呼べ!」


いったいどうしたんだろう。私はルイさんを見る。するとルイさんはこっちを見ずに小さく舌打ちすると呟いた。


「アレモレの仕業ね……」

「え、」

「人間が1人感情を喰われた。……琴里、お札もどき持ってるわね?」

「は、はい」

「ちょっと、そこの君」


ルイさんはその騒ぎを無視して通り過ぎようとした人々の1人に声をかける。声をかけられた男の人は明らかに迷惑そうな顔をして振り返ったが、ルイさんの顔を見ると表情が一変する。
きっと美人さんに話しかけられて嬉しいのだろう。


「なんですか?」

「ここで何があったのか教えてくれないかしら?」

「ここで?あぁ、見た通りですよ。歩いていた歩行者にいきなり殴りかかった人がいて……殴りかかった?いや、違う……。とりあえずいきなり歩行者に襲いかかった人がいて、しばらくもみ合いにあった後、その歩行者が倒れちゃったんです」

「……そう。ありがとう」


それだけ聞くとルイさんはその男の人に背を向けこっちを見た。眉間にシワを寄せなにやら難しそうな顔をしている。
その間にもどんどん騒がしくなる騒ぎの中心。
私は慌てて口を開いた。


「る、ルイさん、どうしましょう……」

「たぶん今感情を喰ったアレモレはもう人混みに紛れてる。見つける事は難しい……いや、もしかしたら近くにまだいるかも……。一応周りをよく見て」

「……は、はい」


私は辺りに目を凝らす。倒れた人を救おうと携帯に耳をあてどこか、おそらく救急車を呼ぼうとしてる人、青ざめる人、自分には関係ない事だと通り過ぎていく人……様々な人がいて様々な反応をする。
すると、また辺りに響き渡る叫び声。驚いて反射的にその声がした方向を見ると、また倒れている人がいた。近くには肩まで伸ばした黒髪を風になびかせた少女が無邪気に笑っている。
え、なに、あの子。
足が地面に根をはったかのように、一瞬にして私は動けなくなった。


「あの子ね、アレモレは。普通の人と反応が違う。普通はあんな風に笑わない……この私の目の前でまた感情を喰らうなんていい度胸じゃない。」


私はルイさんの方を見た。不敵に微笑むルイさんを見て、またゾッとする。


「人混みに紛れて逃げなかった事、後悔させてあげるわ!行くわよ琴里!」

「え、あ、な、にを……」

「世界を救いによ!」


ついてきなさい!そう言って走り出したルイさん。



すいません、もう全力で逃げたいんですけど私。






前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ