ちょっくら世界を救ってきます。
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ザワリと肌が粟立った。なんだろう、この感じ。ルイさんはここまで話すと、目を閉じ息をついた。
今まで話されていた事はとてもじゃないが理解できない。だが、先ほどまでいた金髪の人を思い出すと完全に否定などできなくて。
「……あ、あの、すいません。この世界に天界の方とか……天界から追い出された方とかは簡単に行き来できるのですか?」
「行き来自体は簡単に出来るわ。ただそれは国王から許された人しか行く事はできない。アレモネは知らないわ。まぁでも無法地帯だから誰でも行く事はできるでしょうね」
「……そう、ですか」
「アレモネに感情を喰らわれた人間は悲惨よ。すぐさま病院送りだわ。そんなアレモネに好き勝手させないように国王に命令を受けて私たちはこの世界にやってきた。そして国王に選ばれたのが、あなた。正確には、あなたたち。」
「たち?」
「あなたの他にも選ばれた人がいるのよ」
「…………」
「お願い、琴里」
ギュ、と両手で手を握りしめられる。陽の光を知らないような白い手。指先まで細くキレイだ。
懇願されるように顔を近づけられる。
「正義のヒーローになってこの世界をアレモネから救って!」
「わ、私……」
私、は……。
――――ねぇ、あんたって生きてて楽しい?
「ごめん、なさい……。無理です、無理なんです……私じゃできない」
たとえルイさんの話が嘘でも本当でも、私は絶対にこの答えを言うだろう。
そう言うとルイさんは、ハッとしたように言う。
「ごめんなさい、言い方間違えたわ。正義のヒーローになってこの世界を救いなさい。これは命令よ、拒否権はないわ」
「え?」
今何て言いましたこの方?
私は驚いて目の前で貼り付けたような笑顔を浮かべてる人を見る。
「拒否権はないと言っているのよ、琴里」
「え、あ……」
時々、ルイさんが本当にどうしようもなく怖く感じる時がある。
「どう、して……」
私なんかが選ばれたんだろう。
もっと適任な人たちがいるではないか。明るくて、可愛くて、優しくて、そんな人たちが。
「国王の御命令よ。私なんかが知るところではないわ」
「…………」
「これからよろしくね、琴里」
「え?」
「あなたの家に居候させてもらいまーす」
……え、本気?
早く案内しろと言わんばかりに片手に大きな茶色のバックを持ち、待ち構えているルイさん。
一体どこから出したんですかそれ。
……まぁ、いいか。
きっと今日も親なんて家にいないだろうし。
もうどうにでもなれ、ですよ。