MINHO

□Incantation
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だけど、ある日から、ピタッと俺に手を出さなくなった。



きっと、恋人できたんだろうなぁ。
良かった・・・。
きっとこれで以前のような家族のような関係に戻れる。

という安心感と、

それとも、男の俺の体に飽きたのだろうか?
筋肉ばかりで、女性の様な柔らかいラインでもなければ抱き心地も良くないから。

という少しの不安があった。


残念という気持ちを消すように頭を横に振った。
だって、家族だし、これが当たり前なんだ。
それに、チャンミンだけじゃない。
俺は、弟達の幸せを願っているんだ。

この気持ちは昔も今も、そしてこれからも変わらない。




「ふぅ〜。」

そういう行為をしていないおかげで体や腰だるさが無くなった。
久しぶりに歌もダンスも含んだ長風呂を楽しんだ。
疲れも溜まってることだろうし、部屋に戻って、もう寝よう。


部屋のドアノブを掴んだ。
掴んだだけなのに、勝手にドアが開いた。
自動ドアでも何でも無い。
もう1人のこの部屋の主・チャンミンだった。
俺と入れ違いのように部屋を出て行こうとするチャンミンに一瞬体がビクッとした。

いやいや・・・。
平常心・・・。
平常心・・・・・・・。


「おっ。チャンミン、どこか行くのか?」


いつものように話したつもりが声が裏返ってしまった。
可愛い弟だから、嫌いとかじゃなくて・・・。
反射的にそうなってしまう。
そうなってしまったのは、あの日からなんだけど・・・。

俺の顔をちらっと見て、にっこり笑った。


「・・・。ええ。まぁ。」


きっとそんな俺の態度に気付いてるんだろうけど、気付かない振りをしてて、その事には一切触れない。
だから、俺からも聞かなかった。
もちろん、その最中は、何が何だかわからないくらい頭がぼぅ〜として聞けるはずも無かった。


何とも居辛い雰囲気が流れてしまった。
せっかく、にっこり(多分愛想笑いだろうけど)笑顔を作ってくれてるのに。

「そうか・・・。気を付けてな。」

軽く会釈をして俺の横を通り過ぎるチャンミンの背中を見送った。

そう、以前と同じチャンミンの態度。
俺たちの中では末っ子だし、歳もみんなと少し離れてるから、謙虚な態度を取ってた。
『気にしなくていい。』って言ったけど、年月がたった今でも、その態度は変わらなかった。

だから、あの時間のチャンミンが夢を見てたように思えてくる。

本当に、あの事は現実だったのだろうか?
もしかしたら、単なる夢だったのではないか?
と疑いたくなるほどだ。

部屋に入ると部屋の電気を付け、何気なく主のいないベッドを見た。
奥の俺のベッドとは正反対で、綺麗にセッティングされている。
俺のスペースも何とか片付けないと・・・。と思いながらも、行動に起こせずにいた。
ただ、めんどくさがりだけなんだろうけど。

チャンミンの枕元には、愛読書が置かれていた。





そして、もう一つ、いつもそこには無いものが愛読書の上に無造作に置かれてた。


携帯電話だろうか?
忘れていったのかな。
今ならまだ届けて上げられる。

そう思い、チャンミンのベッドに近づき、その物を手に取った。


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