その花びらにくちづけを

□オレンジ安定剤
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私、どうしたんだろう?


美並はレオの好きな飴に手をかけていた。


無意識でも、考えてしまう。
彼女のこと。
彼女が大好きなオレンジ味の飴。

買ってあげるといつも子供のように喜ぶ。
その顔が見たくて、一緒に買物に来るのに。
なんでだ。

どうして今、私達は別々にいる?


『・・・はぁ』


自分に対して腹が立つ。
素直に「レオの傍に居たい」って言えない自分に。
あんなに彼女は自身に伝えてくれるのに。
私は彼女に何も言ってない。
何も、言ってないんだ。


胸が苦しい。
レオのことを考えるだけで、胸が苦しくなる。
苦しい。助けて。
『レオ・・・。』



「なーに?」



一瞬、色々なことが脳裏を駆け巡った。
でも一つだけ確定したことがある。


ずっと、彼女は居てくれたんだ。傍に。

私はまだ、何も彼女に伝えてない。
なのに彼女は・・・


「レオは美並の傍からは離れないよ」



言われてしまった。
その言葉。
言えない。
言いたいのに。
伝えたいのに。

簡単に口にできたらいいのに。



『私も・・・っ』



レオの好きな飴が美並の手から落ちた。

でもその飴袋を拾う前に。
彼女に言いたいことがある。

どうしても。
おかしくなっても。
伝えなくちゃならない「言葉」がある


『レ・・・オの・・・傍に・・・傍に居たい・・・っ』



言えた。

やっと言えた。

待たせてごめんね。
遅くなって、ごめん。
ずっと傍に居てくれたのに。
私は彼女の手を振り払うばかりだった。

でも彼女は・・・



「私も、そう思う」



笑って、返事をくれた。


よく見るとレオの目尻は少し腫れ上がっている。
泣かせてしまったんだろう。
申し訳ないと心の底から思った。



『泣かせて・・・ごめん。今までごめん。』



これが私の本当の気持ち。


これ以上も、これ以下もない。
素直な、伝えたい気持ち。



「うっ・・・ふぁ・・・っぁ」



するとレオは泣きだしてしまった。
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