わんこな恋人
□01
1ページ/1ページ
「尚せんぱーい!」
小さく俺を呼ぶ声がした。
すぐ横の窓から下を見ると、ぴょんぴょん跳ねてこっちに手を振っている人影。
後輩で恋人の志良だった。
身長185センチ近くある、端正な顔立ちをした、正真正銘の男。
そして俺も、正真正銘の男。
告白されて一度断っても全く諦めることのなかった志良に、俺は惚れてしまった。
単純なのかもしれない。
そりゃ今はすごい好きだけど。
笑うと垂れる目とか、ちょっと見える八重歯とか。
大型犬みたいなとこも、まっすぐなとこも、ばかなとこも。
志良を見てほとんど無意識に笑っていると、先生が窓から顔を出し、ドスを効かせた声で怒鳴った。
「比島ぁ!こっちは授業中なんだよボケ!邪魔すんなカス!」
「わっ、坂ちゃん!?ごめーん!」
坂ちゃんってのは、今怒鳴ってた坂江先生のこと。
裏でヤの付く職業をやってる疑惑が浮上してるが、授業は分かりやすいし、元がかっこいいので、生徒からの人気は高い。
…これだからイケメンは。
友達を置いて志良は玄関に全力で走っていった。
ばーか!と、志良のクラスメイト達がからかっているのが聞こえる。
その姿に俺は思わず吹き出しそうになったが、先生の視線がこっちに向いたのを感じて、前を見た。
にこやかな笑顔で先生はこっちを見ている。怖い。
「浅木ー。犬のしつけは、ちゃんとしような?」
「だから志良は犬じゃな…、すいません。よく言い聞かせます。」
このクラスでの志良のイメージは、俺の愛犬だと、友達から聞いた。
坂江先生からしてもそうらしく、よく今みたいなことを言われる。
反論しようとすれば、ものすごい目力で見てくるので、俺は反論してる途中で謝ることが多い。
先生が一つため息を吐き、授業を再開しようとした瞬間、チャイムが鳴る。
俺は先生と目を合わせないように、ノートに視線を落とした。
うちの愛犬
「尚せんぱー…、げっ!坂ちゃん!」
「よぉ、比島。お前放課後ちょっと数学準備室来いや」
「やだ!俺、尚先輩と帰んないとだし。」
「じゃあ浅木、お前も一緒に来い。」
「……切実に巻き込まないでください。」
――――――――――――
本当は連載する予定じゃなかったもの(笑)
完結という未来が見えません←
130304