一話物語
□幽霊生活
1ページ/1ページ
気が付いたら公園のベンチで横になっていた。
驚いて飛び起きると、視界に入ったオレの足は半透明。
そりゃもう盛大に叫んだ。
それからもう何週間経ったのか。
こうなる前のことは覚えてないけど、たぶんオレは死んだんだと思う。
足は透けてるし、人とか物とかすり抜けちゃうし。
でも何故かこの公園から出ることはできなかった。
「ひかや〜ん、オレ成仏できないのかな〜」
「知らねぇよ。つーかひかやんって呼ぶな」
「冷たいなぁ」
目が覚めたベンチで過ごして何日か経った頃、オレはひかると出会った。
オレを見付けた瞬間、目を見開いて何かを呟いたひかる。
派手な見た目とは反対に、その顔はどこか泣きそうだった。
そんなひかるを見た時、オレは懐かしいと思った。
それから毎日のようにひかるはオレのところに来てくれる。
最初の頃、なにも知らないからとりあえず名前だけでも知りたくて、勝手にカバンを漁ったら、めちゃくちゃ怒られた。
おかげで名前は知れたけどね。
学生手帳と書かれたそれにあった、日下洸って名前。
名字は読めない。
けど名前はひかるって読むんだと思った。
なんで幽霊であるオレが見えるのかとか、不思議だけどあまり気にはならない。
何故かそれが当たり前のように思えたから。
名前以外のこと…、ひかるの泣きそうな顔や、懐かしいと思った理由は、まだ全然分かんない。
ただ、ひかるといると安心して、心の中が暖かくなる。
確信はないけど、きっとオレはひかるのことを知ってるんだと思う。
そしてひかるは生きていた頃のオレを知ってる。
「ねぇ、ひかやーん」
「だから、」
「オレってひかやんのなんだったのー?」
隣に座るひかるを見ると、強い悲しみの色をした目とぶつかった。
オレが驚いて目を見開く前に逸らされる。
一瞬の沈黙のあと、ひかるは躊躇いながら言った。
「どうして俺にそんなこと聞く?」
「…ひかやんはオレのこと知ってると思ったからかなぁ。もしかして知り合いだったんじゃない?オレら」
オレが言い終わるとほぼ同時くらいに、ひかるはものすごい勢いで立ち上がり、睨むように見下ろしてきた。
さっき悲しみの色をしていた目は、今は落胆の色を映している。
「こんなに一緒にいても、なんも思い出さねぇのか」
それだけ言ってカバンを掴み背を向けるひかる。
追いかけることはできなかった。
ねぇ、ひかる。
思い出してないって、なにを?
オレがひかるに悲しい顔させてんの?
次の日からひかるは公園に来なくなった。
幽霊生活
(ひかるくん、…ひかやん。……ひかる)
(どうして来てくれないの)
(ひかるがいないと、寂しいよ…)
――――――――――――
続いちゃいます(こんな長くなる予定じゃなかったのに!)
個人的にひかやんってあだ名がすごく好き(笑)
オレと俺の使い分けに特に意味はありません←
130415