一話物語

□幽霊生活
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気が付いたら公園のベンチで横になっていた。

驚いて飛び起きると、視界に入ったオレの足は半透明。


そりゃもう盛大に叫んだ。



それからもう何週間経ったのか。


こうなる前のことは覚えてないけど、たぶんオレは死んだんだと思う。

足は透けてるし、人とか物とかすり抜けちゃうし。


でも何故かこの公園から出ることはできなかった。


「ひかや〜ん、オレ成仏できないのかな〜」

「知らねぇよ。つーかひかやんって呼ぶな」

「冷たいなぁ」


目が覚めたベンチで過ごして何日か経った頃、オレはひかると出会った。


オレを見付けた瞬間、目を見開いて何かを呟いたひかる。

派手な見た目とは反対に、その顔はどこか泣きそうだった。

そんなひかるを見た時、オレは懐かしいと思った。


それから毎日のようにひかるはオレのところに来てくれる。


最初の頃、なにも知らないからとりあえず名前だけでも知りたくて、勝手にカバンを漁ったら、めちゃくちゃ怒られた。

おかげで名前は知れたけどね。


学生手帳と書かれたそれにあった、日下洸って名前。

名字は読めない。

けど名前はひかるって読むんだと思った。


なんで幽霊であるオレが見えるのかとか、不思議だけどあまり気にはならない。

何故かそれが当たり前のように思えたから。


名前以外のこと…、ひかるの泣きそうな顔や、懐かしいと思った理由は、まだ全然分かんない。


ただ、ひかるといると安心して、心の中が暖かくなる。


確信はないけど、きっとオレはひかるのことを知ってるんだと思う。

そしてひかるは生きていた頃のオレを知ってる。


「ねぇ、ひかやーん」

「だから、」

「オレってひかやんのなんだったのー?」


隣に座るひかるを見ると、強い悲しみの色をした目とぶつかった。

オレが驚いて目を見開く前に逸らされる。


一瞬の沈黙のあと、ひかるは躊躇いながら言った。


「どうして俺にそんなこと聞く?」

「…ひかやんはオレのこと知ってると思ったからかなぁ。もしかして知り合いだったんじゃない?オレら」


オレが言い終わるとほぼ同時くらいに、ひかるはものすごい勢いで立ち上がり、睨むように見下ろしてきた。

さっき悲しみの色をしていた目は、今は落胆の色を映している。


「こんなに一緒にいても、なんも思い出さねぇのか」


それだけ言ってカバンを掴み背を向けるひかる。

追いかけることはできなかった。


ねぇ、ひかる。

思い出してないって、なにを?

オレがひかるに悲しい顔させてんの?


次の日からひかるは公園に来なくなった。




幽霊生活




(ひかるくん、…ひかやん。……ひかる)

(どうして来てくれないの)

(ひかるがいないと、寂しいよ…)




――――――――――――
続いちゃいます(こんな長くなる予定じゃなかったのに!)
個人的にひかやんってあだ名がすごく好き(笑)
オレと俺の使い分けに特に意味はありません←

130415

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