短夢の薬箱

□『月』
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『今、君が一番
  欲しいものって何?』

















アランが聞く。


















「アレが欲しい!」

















大きく手を伸ばし
ジャンプしてみせる。






















空に浮かぶ
銀色の月。

























とどく筈もなく
ただ
やわらかい光だけが
私たちを
照らしていた。

























『本当に月が欲しいの?』



















「・・・・・・・・ううん」


























アランは
フッと笑うと
初秋の風と一緒に
私を抱きしめた。

























『僕に照れ隠しは
     通じないよ?』




























「・・・・・・・・・・・・・うん」























『じゃあ・・・・・
    ちゃんと答えて?



今、君が
 一番欲しいものって
       何だい?』






























「・・・・アランだよ」






















彼はまた
フッと笑った。

























『僕も君が欲しいよ・・・』













そう言って手渡された
宝石箱の中には















無数のキャンディーと
ダイヤの指輪。






















まるで
夜空を鏡で映したような
その宝石箱は
私の手の中で
最高の光を解き放つ。

























私たちの頭の上で
夜毎
形を変えながら
光を降り注ぐ
銀色の月。






















夜空には


















無数のダイヤと






















ビー玉ひとつ。





















END

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