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□ヒュレーを愛したエイドス
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君が、どれほど俺を見ていてくれていたのかは知らない。
わからない。
…俺を、というか、ここで言う俺とは、俺の中身を指し、俺が俺としてあることのできる、――(アリストテレスの言葉を借りれば)形相のことだ。
理性を持った魂。
それは紛れもなく、俺自身のこと。
先程から話題にしていることだけれど。
普段なら俺の本質はもちろん俺自身で、なんてことはこれっぽっちも考えないのだが、どうしても気にせざるを得ない事情がある。
やどりのことだ。
つい最近別れた、…別れを告げられた、##NAME22##のことだ。
俺は彼女を愛していた。
心の底から愛していた。
だからもちろん、俺から別れ話を持ちかけた訳ではない。
やどりも俺を愛していた。
でも言われた、
『別れましょう』
驚いた。
初めてちゃんと好きになって、初めてちゃんと付き合ったから、別れをちゃんと告げられたのも初めてだ、と。
「どうして、…」という思いの他に、「こういうフられ方もあるのか」なんてどうしようもなく冷静な自分もいた。
いや、そもそも、フられたこともないか。
…やどり。
君は俺の、…何を愛していたの。
俺は、君の魂を、愛していたんだけど。
−ヒュレーを愛したエイドス−
(君は俺の質量を愛して)
(俺は君の形相を愛した)