本sdr2

□調子の悪いあの人。たち。
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採集が終わって帰ってみると、レストランにはもう誰もいなかった。みんなはとっくに帰り着いて、お昼ごはんも食べてしまったようだ。
少しくらい待っててくれたらいいのにと思ったけれど、みんな疲れて帰ってきてるだろうしと思い直した。ちょっと寂しいけれど仕方がない。黙々と一人で昼食をとっていると、階段から田中くんが現れた。


「む…、貴様、今だったのか」

「う、ん。さっき帰って来たところ」


私がお昼ごはんを食べていることを確認した田中くんは、眉をひそめている。咀嚼していたものを飲み込んでから答えると、そうか、とだけ返された。


「今日はちょっと遠かったから。田中くんは何しに来たの?」


テーブル側に立ったまま視線を投げかけてくる田中くんにそう聞けば、彼はぱちぱちと瞬いてから口を開いた。


「…俺様は…、…破壊神暗黒四天王のおやつの時間だ」


言い終ったあと頷いて、私の対面へと座る。


「…そう」


そういうことかと納得して、私はごはんを食べるのを再開した。田中くんはというと、腕組をしたままこちらを見つめている。
…ちょっと見られていると食べづらいし、目の前に座ったのならなにかしゃべってほしい。っていうか、おやつの時間は?


「田中くん、四天王は?」


できれば私から視線を外してほしくて、その期待も込めて言ってみた。すると田中くんは、はっとした表情を見せる。


「あ、あぁ。おやつの時間、だ」


…?
なんだか顔が赤くなっている気がする。ちょっと不思議に思ったけれど、田中くんは四天王たちをテーブルに並べておやつをあげだしたから、まぁいいかと私もまたごはんを食べ始めた。

田中くんのハムスターたちはすぐにおやつを食べ終わって、既にストールの中へ戻っている。
それなのに、目の前の彼は腕組をしたまま動く気配がない。レストランにはおやつの時間だから来たって言ったのになぁ。まだここにいるのかなぁ。
四天王がストールに戻ってから、(見続けられて)少々居心地は悪かったけれど、私はなんとか耐えて食べ終わった。お皿を下げようと立ち上がる。田中くんは好きでここにいるんだろうから、別に声をかける必要もないだろう。
流し台にお皿を置いて、大きく伸びをした。夜ごはんと一緒に洗えばいいや…。それまではコテージでお昼寝しようかな。
そう思って階段へ向かうと、田中くんもちょうど出ようとしているらしかった。目が合った。


「あれ、田中くんももう出るの?おやつは?」


声をかけられた田中くんは、なぜか不敵な笑みをにやりと浮かべた。…うーん、やっぱりさっきから顔が赤い気がする。体調でも悪いのかな。
内心心配していると、田中くんは顎を上げて話し始めた。


「フッ、もうすんだ。…貴様ももう出るのか」

「うん、お昼寝しようと思う」

「!!!…そうか。…」


あれ、赤い顔が青くなった。これはいよいよ体調が悪そうだ。
その証拠に、しゃべるのも辛いのか、私に相槌を打ってからは口をぱくぱくさせている。目も乾いているのか瞬きも多い。熱がある時って唇が渇いたりするから、そういうことかもしれない。


「…」

「…」

「…じゃあね?田中くんも具合が悪いなら寝た方がいいよ?」

「…あぁ」


いつまでも黙って立ちすくんでいる田中くんにそう言えば、力なく返事をした。姿勢も少し悪い気がする。前屈みだし、肩に力が入っていない。
心配だなぁ。





「でね、さっきそんなだったから、日向くん、田中くんの部屋に様子見に行ってあげて」


あれからなんとなく田中くんが心配で、結局私はお昼寝をせず日向くんのところを訪れていた。
私から一部始終を聞いた日向くんは深いため息を吐いて、私に呆れたような視線を向けてくる。


「…行かなくてもわかるぞ、田中は体調なんて悪くない。大丈夫だ」

「えっ、なんで?日向くんすごいね」


私のその言葉に、日向くんはさらに眉をひそめた。


「…明日は、雲月も田中も、牧場にするから。おつかれさま」

「えっ、うん」


日向くんは私にもう一度、呆れた、といった顔を見せて去って行く。…田中くんも日向くんもよくわからない。
でも、明日は牧場だなんて願ってもいない幸運だ。あっ、狛枝くんみたいなこと言っちゃった。
明日こそ、お昼寝しよう!











‐調子の悪いあの人。たち。‐
(雲月も田中も噛み合わないな)

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