本sngk

□ sngkリヴァイ
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兵長はどうやら、意外にも気持ちが顔に出ているらしかった。特に恥ずかしいとか、照れているときとか。いつも仏頂面で怒っているみたいだけれど、実はそうでもないようだ。



‐ひみつのはなし‐



「兵長がやると早いです」


野営の訓練は、二人一組だった。巨人に追われ、仲間ともはぐれ、ようやく誰かと合流できたとき、という考えたくもない場合を想定して、二人一組。たぶん、はっきり理由は言われてないけど、一人だとまず助からないとでも言いたいのかもしれない。
話が逸れた。
私が兵長に投げかけたのは、兵長がおこした焚火についての話題だ。


「あ?」


もともと寄ってる眉間の皺を更に寄せて、兵長はこちらに顔を向けて口を開いた。


「バカにしてんのか」

「いや、してないですよ。私、火をおこすの苦手だから。ありがとうございます」

「ふん」


えー?お礼を言ったのに、返って来たのはそれだけで、眉間の皺もほとんど解消されていない。
思えばこういう反応は、今回だけでなく今までも何度かあった。それもいつも、兵長についてなにか、すごいって言ったときにだ。態度もそっけなくなるけれど、眉間の皺が深くて、でもいつものしかめっ面とは少し違う顔になる。
やっぱり照れ屋なんじゃと思う。前から薄々思ってはいた。子供の照れ隠しのときの仕草と一緒だから。
そう思ってもう一度、兵長の顔を盗み見た。もしかしたらどこか、わかりやすく、いつもと違うところがあるかもしれない。
じっと見ていたら、視線に気づいたらしい兵長が、(今度は本当に不愉快そうに)眉を寄せた。


「じろじろ見るんじゃねぇ」

「あっ、いや、その」


ヤバい。これは返答をまちがったらしばかれるヤツ。焦る。


「えっと」

「なんだ」

「た、頼れて、かっこいいなぁ…と」

「…」

「…」

「…」


しまった!兵長が黙ってしまった!
これは怒られる。怒られるヤツ。兵長の顔から目を逸らしたいけれど、あまりの眼光の鋭さにそれもできないでいる。
…あれ?怒っているものだと思って顔を見つめていたけど、なんだか違う気がする。なにがだろう?
…あ!ほんの少し、ほんのすこーしだけど、左の眉だけが…上がっている気がする…。
これは大発見だ、と思いながら尚も見つめていると、この状況に耐えきれなくなったのか兵長が口を開いた。


「おい、あんま見るなって言ってんだろ」


私は見逃さなかった。そう言って兵長が視線を逸らす前に、左の眉だけを、ぴくっと動かしたことを!
相変わらず顔色が変わってるとか、眉間の皺がなくなってるとかではないけれど、これはきっと、照れている証拠だと、思う!


「ふふふ」


いつの間にか兵長への恐れのなくなった私はすっかり、緊張感も口元も緩んでしまって、笑い声を漏らしてしまった。
兵長はもう、こっちを見ないまま、なにやらたき火にがんがん薪をくべながら、なに笑ってやがる、って言っている。
いいえ、教えませんよ。兵長の、おそらく兵長自身も気がついていない、ちょっとだけ恥ずかしくてかわいらしい秘密、簡単に教える訳ないじゃないですか。


「兵長、たき火の勢いがすごいです」


手を止めない兵長にそう言ってみると、兵長はこっちに顔を向けて、わかってる!ってやけくそな風に言った。
今までなら怒らせたって思うところかもしれないけど、やっぱり左の眉だけが上がってて、私はまた笑ってしまった。









‐ひみつのはなし‐

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