本sngk

□愛していると言って欲しい
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エルヴィン団長とこんな関係になってから、まったく後悔していないと言えば嘘になる。けれどもこの関係を断ち切る勇気もなく、私は今日も彼と、体だけを繋げている。



‐愛していると言って欲しい‐



私から誘うことはほとんどない。誘ったとしても、彼がそれに合わせてくれることはなく、たまたま予定が空いていて体力や仕事に余裕があるときだけ、応えてくれる。
それなのに、私が彼からの誘いを断ることは許されないらしい。一度だけ、もう離れようと思った私が、彼の言葉に首を横に振ったことがあった。そのときの彼は、引き止めるでも激怒するでもなく、ただただ落胆した、という顔をした。…そして私は弱さからか、寂しさからか、彼から引き止めてもらうはずだったのに、むしろ立場は逆で、こうしてまたずるずると、この関係を続けている。もしかしたら以前よりも私は彼に下に見られているかもしれない。
恋愛関係にある男女って、どちらが上で下で、とか主従関係とか、ないのが望ましいだなんてこと、わかってる。縋るような恋愛は恋愛じゃないって。そう思ってる。
そしてそれに対する私の言い訳は、「そもそもこれは恋愛じゃないから」だ。ずるい。心のどこかで自分の声がする。聞こえないフリをする。こんな歪な、求められるのは体だけ、それも彼の都合のつくときだけ、という存在の私は、無理に自分の気持ちに整理をつけている。
この立場でいるのは私だけ、きっと、私だけ。

繋がるのは体だけ。何度も思う。だけれど私は、ずっとエルヴィン団長に憧れてきた私は、つい心までも求めそうになる。
荒い呼吸の合間に、途切れる声で彼の名前を呼ぶ。


「エルヴィン、だんちょ、う…。すきです…っ!」


は、と短く息を吐き出して間を埋めても、その後に続いてほしい彼の声は聞こえない。求める言葉はもちろん、
「あぁ、私もだ。愛している、やどり」
それだけが、欲しいのに。
聞こえるのは、エルヴィン団長の浅い息遣いと、私がそれに応える声。応えようとしている声。
返事なんてないのに。相手がいるだけで、一人きりでいる時間と変わりない、団長と過ごす時間。何も生むことのない、無意味だと言われればただそれだけの時間なのに。
それでも私は、この席を誰かに譲る勇気もないまま、彼の下で情けない姿をさらしている。
この口の端が、ゆるやかに上がっていくのは、愉悦だろうか。








‐愛していると言って欲しい‐
(誰への優越感が欲しいの?)

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