本sngk
□あまくてすっぱい
1ページ/1ページ
朝、なんだかふらふらするのをごまかして学校に行こうとしたけど、おかあさんに「やめときなさい」ってとめられた。
どうしても今日は行きたいんだって言ったら、「なんで?」って言われた。私が「給食がイチゴゼリーだから」ってこたえたら、「それくらい買ってくるから」って。
それならまぁいいか、と思って、おともだちに会えないのはさびしいけど、学校をおやすみした。おかあさんは「お熱があるから寝てなさい」って言って、私をベッドにねかせてお部屋を出て行った。
元気なんだけどなぁって思ったけど、遊んでておこられたらイチゴゼリー買ってくれないかもしれない。それはいやだな。ちゃんとベッドで寝なきゃ。
いいなぁ、みんな今日の給食、イチゴゼリー食べるんだなぁ。私のぶんも、だれかが食べちゃうのかなぁ。
「やどりちゃん、起きて」
おかあさんに起こされた。まだねむたいよって言ったら「リヴァイくんが来てるよ」って。
「リヴァイくん?学校は?」
「もう学校は終わったんだって。やどりちゃんにって先生からプリント預かってきてくれたみたい」
そうなんだ。
あくびをしてからおかあさんのうしろをついて玄関に行った。
リヴァイくんは玄関で立ってまっててくれていた。
「リヴァイくん、ありがとう」
「べつに、いい」
リヴァイくんは、私のとなりの席だから、先生にたのまれたのかもしれない。
おうちも近いって、言ってたきがする。
リヴァイくんは、いっつもおこってるみたいだけど、ほんとうはやさしい。私が教科書をわすれたときは見せてくれたり、わからないところはおしえてくれたりする。
リヴァイくんはランドセルをろうかの床において、紙ばさみからプリントを出してくれた。
「これ、しゅくだい」
「うん、ありがとう」
「リヴァイくん、ちょっと待っててね。おばさんお礼にお菓子あげるから」
おかあさんが言うと、リヴァイくんはうん、っておへんじをした。
いなくなったおかあさんを見てから、ランドセルに紙ばさみをしまって、また手を出してきた。
なんだろうと思って見たら、給食のイチゴゼリーだった。
「あっ、これ、どうしたの?」
「今日の給食。雲月のぶん」
「もってきてくれたの?」
「うん」
「ありがとう!!」
リヴァイくんは、私がお礼を言ってゼリーをとったら、うん、ってもう一かい言った。
よかった。だれも食べなかったんだ。リヴァイくんももってきてくれてやさしいな。
ふたがとうめいだから、中のゼリーが見える。あかいいろのイチゴゼリー、たのしみだな。
手の中のゼリーを見ていたら、おかあさんが紙ぶくろをもってかえってきた。
「ごめんね、お待たせ、リヴァイくん。これお礼ね。持って帰ってね。…あらら、やどりちゃんゼリーどうしたの?これもリヴァイくんが持ってきてくれたの?」
おかあさんは早口でしゃべって、リヴァイくんと私をじゅんばんに見た。私が「そうだよ」っておかあさんに言うと、おかあさんは「あらあら」ってうれしそうなかおをした。
リヴァイくんにふくろをわたすとき、リヴァイくんは下をむいていたけど、おかあさんはうれしそうなかおのままだった。
「本当にありがとうねリヴァイくん。これからも仲良くしてね」
リヴァイくんは、下をむいたまま、うん、って言った。そのままちょっとだけおじぎをして、ランドセルをもってかえった。
「よかったねぇ、リヴァイくん優しいね。ゼリーあとで食べよっか」
おかあさんはにこにこしたまま言ってるけど、ゼリーを買いに行かなくていいからうれしいのかな。
そういえば、もうふらふらしないから、あしたは学校に行けるかもしれない。またリヴァイくんにありがとうって言わないと。
おかあさんが、「お熱だったから特別だよ」って言って、ばんごはんのまえにゼリーを食べさせてくれた。
ふたをあけたら、いちごのにおいがした。
スプーンでだいじにすくったときに、おかあさんが、「リヴァイくんみたいに真っ赤だね」って言った。でも、もうスプーンはくわえちゃったから、よくわからなかった。
‐あまくてすっぱい‐