偽りの夜想曲

□14.スリザリンの継承者
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期末試験が始まる6月1日を3日後に控えた朝、朝食の席でマクゴナガルがまた発表があると言った。

ひと言目に「良い知らせです」と出た途端に、大広間は蜂の巣をつついたようになる。

マクゴナガルは騒ぎが収まるのを待って、いよいよマンドレイクの収穫ができるようになったと告げた。



「今夜にでも、石にされた人たちを蘇生させることができるでしょう。言うまでもありませんが、そのうちの誰かが、誰に、または何に襲われたのか、話してくれるかもしれません。私はこの恐ろしい1年が、犯人逮捕で終わりを迎えることができるのではないかと、期待しています」



歓声が爆発した。

ノアがグリフィンドールのテーブルを見ると、ハリーが目を輝かせ、ロンが今まで見せたことがないような嬉しそうな顔をしていた。


対するスリザリンのテーブルは、いまいちパッとしない反応だ。

規則が緩くなるのは嬉しいが、事件の解決は望んでいないといったところだろう。

ドラコは大っぴらに“余計なことをしやがって”という態度を取っている。



「ノア、薬が完成する前に医務室のやつらの口を塞いで来い」

『無茶言わないで。あんな完璧な防御、どうやって崩したらいいのかわからないですよ』

「完璧な防御?まさか、ミセス・ノリスで試したんじゃないだろうね」

『あーいやー……』



ハーマイオニーの襲撃現場に居合わせたあげく触りましたと言うわけにもいかず、ノアは今までの実験の結果とそこから推測されることを、必要以上に長く小難しく説明することでごまかした。

注目していた周囲の生徒は途中で飽きて食事に戻り、ドラコも「ふぅん」と気のない返事で流す。



「でも規則では、息の根を止めにくるかもしれないからっていう理由で面会謝絶だっただろう」

『継承者なら可能だって考えたのかも?』

「殺すつもりなら最初から殺してるだろ」



フンと鼻を鳴らしたドラコは、石にされた生徒達が目を覚ましたところで事件は解決しないと、1時限目の授業中ずっとブツブツ言っていた。


他の多くの生徒は、明日になれば全ての謎が解けるだろうと思っていた。

ロックハートもかつてないほど自信満々で、ハグリッドが捕まったにも関わらず見回りや生徒の引率をするなんて馬鹿馬鹿しいと考えていた。



「まったく、マクゴナガル先生が、まだこんな警戒措置が必要だと考えていらっしゃるのには驚きますね。私たち先生というものは、いろいろやらなければならないことがあるというのに……」

「その通りです、先生」

「引率はここまでにしてはいかがですか」



魔法史の教室まであと廊下1つ分というとき、ハリーとロンがロックハートの考えに賛同した。

やはり2人は原作の展開をなぞっているようだ。

ノアはロックハートが引率を放棄した後、お腹が痛いと言って列を抜けた。






「あなたたちも腹痛ですか?」

「いえ違います。僕らハーマイオニーのお見舞いに来ました」

「マクゴナガル先生から許可はもらってます」



先回りをしたノアに、どうしてお前がここにいるんだという目を向け、ハリーとロンはハーマイオニーのベッド脇に座った。



「もう少しだよ、ハーマイオニー……君がいてくれたらこんなに時間はかからなかっただろうに……」

「ノアはまったく役に立たなかったよ」

『聞こえてますよー』



マダム・ポンフリーにもらった薬をこっそり花瓶に捨てながら、ノアは2人の推理がどこまで進んでいるのだろうと考えた。

目の前にいる2人は、ずいぶん落胆しているように見える。

このまま出て行きそうなら、止めてハーマイオニーの手の中にヒントがあることを伝えなければならない。


(これ、私がいるから調べられないとかじゃないよね?)


一抹の不安がよぎったとき、ハリーがハーマイオニーの手の中に押し込められた紙を見つけた。

それからはとんとん拍子に進んだ。

2人は怪物の正体から石化の謎、秘密の部屋への入り口を次々に推理し、バタバタと駆け出していった。


(よ、よし。結果オーライ……)


杞憂どころか自分が完全に空気だった事実に気づかないふりをし、ノアはマダム・ポンフリーに『部屋で休みます』と言って医務室を出た。

もうすぐ午前の授業が終わるが、リドルからのお呼び出しはかからない。


(というか1人で秘密の部屋に行ってない?)


忍びの地図に目を通して眉根を寄せたとき、マクゴナガル先生の声が廊下に響き渡った。
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