偽りの夜想曲

□04.組分け
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汽車の旅の次は、ボートの旅だ。

いつの間にかノットはいなくて、ハーマイオニーもドラコも見つけられなかったノアは、ハリーとロンのボートにお邪魔させてもらった。



「進めぇ!」



ハグリッドの合図で、生徒を乗せた小さなボートが一斉に動き出した。

広大な湖の上を、何十艘という木製のボートが松明を掲げ、滑るように進んでいく。

圧巻の一言だった。


天に向かってそびえ立つ大きな城。

大小の灯りが漏れる窓。

ボートが進むときに立てるわずかな水音、湿ったにおい、肌を撫ぜるひんやりした風――。


映像で見るのと実際に体験するのは全然違う。

言葉では言い表せない感動がノアを襲い、鼻の奥がツンとした。



「嘘だろ君泣いてるの?」

『だってすごすぎるもの……』

「その気持ちわかる気がするよ……」



涙ぐむノアの横でロンが目を見張り、ハリーがほうっと息を吐いた。

松明に照らされてエメラルドグリーンの瞳がキラキラと輝いている。

兄たちに話を聞いているであろうロンでさえ、城が見えた瞬間に「すっげぇ……」と漏らしたのだ。

どんなところかもわからずに来た子どもたちの感動は計り知れない。

新入生だけボートで移動しようと決めた人は天才だと思う。


(わあぁ、城の中もすごい……)


最大限に期待に胸を膨らませたところで、大きな樫の木の扉をくぐり、広い広い玄関ホールに通された。

天井は見えないほど高く、正面には大理石の階段が上へ上へと続いている。

何もかもスケールが違う。


ノアたちは松明の炎に照らされる石壁に沿って進み、小さな――それでも横1列に10人は並べるだろう――階段に集められた。



「本当なんだな。ハリー・ポッターがホグワーツに来たって」



先生が去ってすぐ、集団の端から気取った声がした。

魔法界では知らない者はいないその名前に、新入生の一団がざわついた。



「僕はマルフォイ。ドラコ・マルフォイだ」



声の主は寄りかかっていた手すりから離れ、ハリーの側へ寄った。

気取ったしゃべり方と、わざわざ1段上まで行って見下ろす偉ぶった態度に、ハリーは初めからあまり良い顔はしていなかった。

それでも気にせずドラコは上から目線で話を続けた。



「――付き合う友達は選んだほうがいい。僕が教えてあげよう」

「いいよ。友達なら自分で選べる」



ノアはハリーとドラコがしっかり険悪なムードになるのを見届けてから、宙に浮いたままになっているドラコの手を握った。

「は?」だか「え?」だかいう声が複数あがった。



「なんだお前」

『ノアです。さっきはドウモです』

「なんのつもりだ。手を離せ」

『おのぼりさん、イギリスのコト、よくわからないです。教えてくれるの、アリガトーです』


にこーっと満面の笑みを浮かべ、上下に腕をぶんぶん振る。

ドラコは片眉を跳ね上げ、腕を引き抜こうとしたが、ノアがガッチリつかんで離さなかった。

あちこちでクスクス笑いが起きた。




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