stand by me

□三角関係
1ページ/6ページ

クリスマスの前日、レナとリーマスはウィーズリー家に招待された。

大家族が住んでいるにしては小さめの家は、ジニーによって飾りつけられ、W.W.W.に負けず劣らずの賑やかさになっていた。

大きなクリスマスツリーのてっぺんでは、飾られている天使が生き物のように暴れている。

何か叫んでいるようにも見えたが、ラジオから流れてくる歌と、フラーの大きな話し声にかき消されて、何を言っているのかまではわからない。

レナは天使の声を拾うことを諦め、暖炉の炎をじっと見つめているリーマスを眺めることにした。


(何かあったのかな)


このところ――といっても、数ヶ月ぶりに戻ってきてからの3日間だが――リーマスの様子がおかしい。

話しかけても気づかなかったり、ぼーっとしていたり、今のように考え込むように手を組んでいる姿をよく見かける。

自意識過剰でなければ、レナを注視していることも少なくない。

そのわりにはあまり目を合わせようとしないし、会話も以前と比べると弾まなくなった気がする。



「メリークリスマス」

「大丈夫?」



珍しくつながりのないセリフを言いながら、フレッドとジョージがレナの両脇に座った。

2人は「ごめん」と口をそろえた。



『何が?』

「ルーピンだよ」

「何も言われてない?」



ひそひそ声で言い、顎でリーマスを示した。



「店のことで俺たちめちゃくちゃ怒られたんだ」

「ポスターもはがされた」

「そりゃだまってやった俺らも悪いと思うけど」

「でもあれは営業妨害だ」


(怒っているからあの態度……?)


リーマスは顔を暖炉に向けたまま、目だけがしっかりとこちらを向いていた。

膝の上で組んだ手の人差し指だけが動いている。

音楽に合わせてリズムを取っている――わけではないだろう。

レナは両隣を軽く睨みながら声をひそめた。



『全然大丈夫じゃなかったんじゃん』

「ルーピンだって鬼じゃない」

「話せばわかってくれる」

『そうかもね――って、私が!?』

「レナならいける」

『無茶言わないで』

「僕らに借りがあることを忘れちゃいけない」

『それもうチャラになったでしょ!?』

「そう言わず」

「頼んだ」



フレッドとジョージがレナの肩を叩き、そのままリーマスのほうに押した。

横目で様子を窺っていたリーマスが顔を上げて苦笑いした。



「2人とも、あまりレナをいじめないでくれるかな」

「誤解だ」

「いじめてない」

「まあ、レナで遊びたくなる気持ちもわかるけどね」

『ちょっとリーマス!そこは保護者としてビシッと注意して!』

「そうだね。フレッドとジョージには気をつけるんだ、レナ」

『私!?』



焦っていたのはレナだけだったようで、3人は「ははは」と愉快そうに笑った。

レナが文句を言おうとしたところで、ラジオのボリュームがあがり、わななくような歌声が響き渡った。


フレッドがモリーに謝り、ジョージが「お気に入りの歌手なんだ」とレナに耳打ちした。

2人は最後にもう1度レナをぐいっとリーマスのほうに押し出し、ジニーを誘って爆発スナップのゲームを始めた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ