比翼の風見鶏

□ジニーの秘密
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すっかり終わっていると思った初戦の勝利を祝うパーティは、ヒナノが戻ってもまだ続いていた。

というより、ケーキやお菓子の量がすごくて普段と同じことをしていてもパーティに見えるような状況だった。

そんな中、ジニーだけがまたしても青い顔をしていた。

ハリーのことが心配でたまらず、心ここにあらずといった様子だ。



「ヒナノ、ヒナノ、ハリーのお見舞いに行かない?」

『えっ、今から?』

「しーっ」



ひそひそと発せられたコリンの発言にヒナノは驚いた。

もうじき消灯という時間だ。

片づけをする姿や、各自の部屋へ向かう寮生があちこちで見られる。

その人たちに気づかれないように、コリンはますます声をひそめた。



「ハリーも1人じゃ心細いだろうし、元気なところを写真に撮ってきたらジニーも安心するでしょ?」

『怪我人を撮るなんてよくないわ。ハリーだってやめてって言ってたじゃない』

「そうかな?でも僕、ハリーとジニーを励ましたいんだ」

『それはいいことだと思うけど……』

「でしょ?そうだ、ジニーを連れていって、ハリーがいいって言ったら写真を撮るのはどうかな?ちゃんと何か――このぶどうがいいや。とってもおいしそう。うん。これできっと2人とも元気になるよ!」

『ちょっとコリン!』



夜に出歩くのは規則違反だと言おうとしたが、コリンは1人で納得してジニーを連れて出て行ってしまった。

そして、朝になっても戻ってこなかった。



***



コリン・クリービーが石になったというニュースは、月曜の朝には学校中に広まっていた。

ホグワーツで隠し事はできないと再認識させられる結果となったが、今回は1つだけ事実と異なる点があった。

噂では、コリンが1人でこっそりお見舞いに行ったときに起こった悲劇ということになっていた。


実際は2人だったということを知っているのはヒナノただ1人だ。

一緒に出て行った張本人でさえ何も覚えていなかった。

その怯えようを見ていれば、嘘をついているわけではないとわかる。

しかし、覚えていないことがジニーをますますパニックに陥れた。



「どうしよう、ヒナノ、あたし……あたしがやったんだわ……!」

『落ち着いてジニー、ジニーは人を石にする方法を知ってるの?』

「し、知らない……けど」

『知らないことを無意識にやることなんてできないわ』

「でもあたし、ハロウィーンの日も記憶がなくて……気づいたら、これ……っ」



ジニーがベッドの下に押し込んでいたローブを取り出した。

広げると、血のようなものがべっとりついていた。



「その前は羽まみれだったの。どう考えてもおかしいでしょ?もしかしたらブラッジャーでハリーを襲ったのも……」

『あのときジニーは私の隣で応援してたわ!杖なんて持ってなかった!』

「じゃあこれは何?どうしてコリンが石にされて私は無事だったの!?」



ジニーはさめざめと泣いた。

どうすることもできなかった。

ジニーがハリーやコリンを襲うなんてありえないのに、状況はジニーの言い分を裏付けるようなものばかりだ。



『きっと誰かがジニーを貶めようとしてるのよ』

「誰が?何のために?」

『それはわからない。でも、絶対にジニーじゃない。私が保証する――私が証明してあげる』



ジニーの不調の原因がわかった途端に怒りがわいてきた。

あんなに明るくて勝気だったジニーをこんなに追いつめるだなんて許せない。



『とにかく、ジニーが無事でよかったわ』



ヒナノはジニーを抱きしめ、絶対に犯人を突き止めてやると心に決めた。



***
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