比翼の風見鶏

□疑惑のブラッジャー
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ホグワーツの噂が広まる早さは尋常じゃなかった。

ヒナノがスネイプにモップをかぶせたという話は、あっという間にグリフィンドール中に知れ渡った。

10点も減点されているというのに、寮生たちがヒナノを責めることはない。

そればかりか、「よくやった」と言われる始末だ。

とりわけフレッドとジョージは面白がった。

率先して噂を広め、クィディッチの練習にはモップの先を頭に乗せて登場した。



「フレッド、ジョージ、ふざけてる場合じゃない。試合まであと1週間しかないんだ」



ウッドはご立腹だった。

しかしフレッドとジョージは天気を理由に必要なものだと言い張った。

嵐というほどではないが、傘が必要なくらいには雨が降っていた。



「今年最初の練習でフィールドを横取りされたのを忘れたのか?スネイプの怒りを買って練習禁止令でも出されたらどうするんだ!」

「スネイプがグリフィンドールの練習を見に来るか?」

「もし今年も負けるようなことがあれば、そんなことになれば、……っ」

「わかったよオリバー」

「想像で泣くな」

「俺たちちょっと吸水性のいいタオルが欲しかっただけだ」

「なんせここのところずっと湿ってるからな」



オリバーに謝った2人は、ヒナノの頭にモップを乗せて箒に跨った。



『フレッドとジョージってすごいんだね』



ただのモップの先かと思われたそれは、ちゃんと(と言っていいのかどうかわからないが)帽子として被れるつくりになっていた。



「授業に関係のないことに関してはピカイチよ」



空に目を向けながらジニーが言った。

相変わらず顔色は悪いが、今日は少し調子がいいようだった。



『あっ!見たジニー?今のジョージの返しすごかったね!』

「あれはフレッドよ」

『フレッドのスイングも!逆さまなのに正確に打ち返すってどんな運動神経してるんだろ!』

「そっちがジョージ」

『よくわからないけど2人ともかっこいいね!』

「ヒナノって意外と大雑把なんだね」



夢中になってシャッターをきっていたコリンが笑った。

カメラが雨に濡れないように大きな布で体ごとすっぽり覆っているため、小さなテントがしゃべっているようだ。



「うーん、やっぱり雨だと上手に撮れないや……」

『フォーメーションの確認のときを狙ってみたら?』

「超重要情報だから撮影禁止って言われたんだ」

『あらら。さすがウッド。厳しいのね』

「ヒナノを誘えば晴れると思ったのになあ」

『私別に晴れ女じゃないよ?』

「でも幸運の持ち主でしょ?」

『へ?』



いったいどうしてそうなったのか。

空飛ぶ車を目撃した件を指しているのだとしたら引きずりすぎだ。

なんて思っているうちに、雨が弱まってきた。

そして止んだ。

練習が終わる頃には、空に虹がかかっていた。



「ウワー!すごいよヒナノ!さすが幸運の女神だ!」



見事ハリーをカメラに収めることに成功したコリンは大興奮だった。

変な呼称をつけたかと思ったら、ヒナノの写真も欲しいと言い出した。



「僕、お守りにするよ!」

『落ち着いてコリン、その発言はいろいろ誤解されるって』

「いいでしょ?ね?みんなで撮ろうって約束したよね?」

『うん、みんなでね』

「みんなってことは」

「俺たちが入っても問題ないよな?」



ヒナノがたじたじになっていると、練習を終えたフレッドとジョージが上空から降ってきた。



「幸運の女神との写真か」

「これはいいお守りになるな」

『違うの。コリンが勝手に言ってるだけで、幸運なんて持ってないしお守りにもならないわ』

「いやいや」

「スネイプの頭にモップを乗せるなんて」

「狙ったってできないことだ」



ヒナノの静止もむなしく、2人はクィディッチメンバーを呼び集めた。

勝利祈願だと言って半ば強引に集合写真を撮る。

思いがけずハリーと同じフレーム内に収まることに成功したコリンは、ますますヒナノを尊敬の眼差しで見るようになった。



「現像できたらサインを入れてくれる?」

『私が!?』

「ハリーと一緒に書いてくれないかな?」

「いいね」

「引き伸ばしてロッカールームに飾ろう」

「試合に集中できないからやめてよ……」



フレッドとジョージに肩を組まれたハリーがうんざりした表情で言った。

助けてくれそうなジニーは、コリンと一緒になってほくほくした顔をしている。

ヒナノはちょっとだけハリーの気持ちがわかった気がした。



***
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