虹色従者は今日も行く!
□[番外]忍び寄る黒い影
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最近、変なのに付きまとわれるようになった。
アルコ・イーリスという生徒だ。
グリフィンドールの3年生で、成績は中の下。
ときどきレポートで突拍子もないことを書いてくること以外は、取るに足らないごく普通の生徒だった。
それがある日突然、最重要注意人物になった。
『スネイプ先生、ご機嫌いかがですか?』
「最悪だ」
スネイプがため息をついた途端、ひょこっと廊下の角から出てきたのが、その問題の人物だ。
偶然出会いましたみたいな顔をしているが、コソコソ後をついてまわり、タイミングを見て先回りをしていることはわかっている。
隠すつもりもないのか、肩を上下し、額に汗を滲ませ、ぜーぜーと荒い呼吸を繰り返している。
全速力で走ってきたのが丸わかりだ。
『それは困りましたね。私になにかできることはありませんか?』
「我輩の視界から消えて頂けると大いに助かる」
『あっ、失礼しました!私なんぞがスネイプ先生の前に立つとは、出すぎた真似をして申し訳ありません。あとで自分を罰しておきます!』
文字通りの視界ととったイーリスは、どこぞの屋敷しもべではないのだからという台詞を吐き、ススッとスネイプの後ろにまわった。
影のように付き従わなければだの、背後にいては突然の敵に対応できないだの、1人でブツブツと意味不明なことを言っている。
気持ち悪いの一言に尽きる。
「イーリス」
『はい!』
「困ったことに、我輩はどうやら教室にレポートを忘れてきたようだ」
『取ってまいります!』
敬礼する姿勢を取ったイーリスが走り去った隙に、正反対の方向へ足を向ける。
このセブルス・スネイプが、生徒から逃げていると考えるとたまらなく屈辱的だが、静かな時間を手に入れるためには致しかたない。
レポートが置かれていないことに気づいたイーリスが戻ってくる前に、城の外へ避難をしなければ、次は何を言い出すかわかったものではない。
命令を遂行できませんでしたかくなるうえは罰をと騒ぎ出しかねない。
となると、夕飯に戻るのも危険だ。
森へ行き採集をして時間を潰し、夜になってから戻るのが良さそうだ。
「夜か……」
最初に満月草が思い浮かび、頭を振った。
ただの罰則を曲解した挙句に運命だと言って抱きついてくるなど、誰が予想できただろうか。
わざとやっているのであれば、かなり高度な嫌がらせだ。
こんな問題児は見たことがない。
ウィーズリーの双子ですら可愛く見える。
トロールの相手をしていたほうがよっぽどマシだ。
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