比翼の風見鶏

□果たされることのない約束
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「あ、あなたが悪いのよ!」



まだ何も言っていないのに、女の子はヒナノに食って掛かってきた。



「スクイブ崩れのできそこないのくせに!かすってる程度のブラック家の血筋をかざして彼に近づいたりするから!」

『……その話、誰から聞いたの?』

「彼がいつも談話室で言ってるわ!あなたはわがままで面倒で手に負えないって!彼は優しいから何も言わないだけで、すごく迷惑しているのよ!」

『だから彼って誰よ』



聞くまでもないことだったが、念のため尋ねた。女の子は今にも泣き出しそうな声で「マルフォイ君よ!」と叫んだ。



「私は入学する前からずっと彼が好きだったの!でも聖28一族じゃないから諦めてた。彼にはもっとふさわしい人がいるって……それなのに、なんであなたなのよ!」

『落ち着いてよ。私とドラコは友達で、恋人じゃないわ。異性として好きなわけでもないし――』

「嘘よ!いっつも一緒にいるじゃない!色目を使って!」

『どこらへんが?』



いつもなわけがない。

一緒にいたってすぐ喧嘩になる。

ドラコが言ってくるのは嫌みばかりだと説明しても無駄だった。

女の子はついにワッと泣き出した。
 


「手紙が爆発したときだって――違う、あれは私じゃないわ!私はこれが初めて――本当よ!――彼があなたを庇うようなことを言うから私――」

『庇う?何か言ってたの?』

「は、鼻ぺちゃで傲慢だって言ってたわ!――とにかく、あなたをよく思わない人は、たくさん、いるってことよ!身分をわきまえなさい!」



しゃくりあげながらのうえ、周囲で大声に驚いたフクロウがひっきりなしに羽ばたいているので、何を言っているのかよくわからない。

女の子が帰ってしまってから手紙を拾って開けてみると、“お前が犯した罪は大きい。ブラックと一緒に捕まってアズカバンに行くのも時間の問題だ”と書かれていた。







『鼻ぺちゃのどこが庇う発言なのよ。わきまえるって何?スリザリンでは私がドラコとブラックのファンクラブ会員ってことになってるわけ?』



戻った談話室でヒナノはプンプン怒った。

ハリーの練習を見に行こうとしていたジニー、コリン、ロンの3人は顔を見合わせ、ヒナノを連れ出して道中で話を聞いた。



「そりゃ、ご愁傷様、だな」

『でしょ!?だいたい罪って何よ。スリザリンではドラコが王様なわけ?歯向かった者は打ち首なの!?』

「まあ、ある意味罪なことをしてるわね」

『確かに泣かせちゃったのは悪いと思うけど……』

「そうだ!ハリーの写真集を持ち歩いてみたら?ハリーのファンだってわかれば嫌がらせがなくなるかもよ!」

「やめてやれよコリン、ハリーが泣くぜ」

「みんな何を言ってるの?罪ってそういう意味じゃないわ」



ジニーはため息をつき、「それにしてもマルフォイを好きな人が他にもいるなんて」とブツブツ言いながら眉間にしわを寄せた。



「信じ難いけど、スリザリンでは人気があるのかもしれないわね」

「あのマルフォイが?おっどろきー」

『ねー。かっこいいし、クィディッチも上手だし、優しい一面もあるし、キザなことも平気でするし、わからなくもないけどー」

「ワァ……」

「……わかっちゃうの?」

「それはそれでおっどろきー」



失言だったとハッとしたときには見覚えのある表情が3つ、ヒナノを見て青ざめていた。



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