偽りの夜想曲
□07.真夜中の決闘
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決闘をけしかけてやったと自慢気に話すドラコにトロフィー室までの行き方を聞き、見回りが始まる前に忍び込む。
ついでに持ってきた例の本を読みながら時間を潰していると、真夜中になってハリーたちがやってきた。
「遅いな、たぶん怖気づいたんだよ」
「まずい、ミセス・ノリスだ」
「こっちだ」
声を殺して話していたハリーたちが何かに躓いて鎧を倒したタイミングで、入れ替わるように前に出る。
フィルチは目を血走らせ「またお前か!」と歓喜の声をあげた。
「今度は真夜中だ!迷っただなんて言い訳は通用しないぞ!」
『ええーっ、もう真夜中なんですかー!?』
「白々しい!こっちへ来い!」
『はーい』
まんまとフィルチの部屋へ連れて行かれることに成功したノアは、生徒から没収した品で溢れる室内を抜け目なくチェックした。
この中のどこかに忍びの地図があると思うと、深刻そうな顔を保つのも大変だ。
「待っていろ!校長を呼んできてやる!」
(行ってらっしゃーい)
フィルチが出て行ってすぐに杖を取り出し、呼び寄せ呪文を使う。
縦長のボロボロの羊皮紙が引き出しから飛び出してきた――これに間違いない。
『我、よからぬことを企む者なり』
中央に杖先を当てて唱えると、インクがくもの巣のように広がり、地図になった。
(わあ、クィレル先生の名前の横にヴォルデモートって書いてある――ってフィルチのやつ、スネイプ先生のところに向かってるし!)
興味津々で地図を長めていたノアは、フィルチの名前が地下にあることに気づいて慌てて寮に戻った。
間一髪、地図のおかげでスネイプが確認しに来る前にベッドにもぐりこむことに成功する。
『いたずら完了』
今日これ以上何かするのは危険だと判断し、ひとまず例の本と一緒にトランクにしまっておくことにする。
2度にわたり生徒を罰する機会を取り逃がしたフィルチはカンカンで、翌朝ノアを見るなりダンブルドアの前まで引っ張っていった。
『フィルチさんの勘違いじゃないでしょーか』
退学にさせられてはかなわないので、ノアはしれっと嘘をついた。
三角眼鏡ごしのダンブルドアの鋭い青が怖い。
気を抜いたら全部話してしまいそうだ。
「一言よろしいですかな?」
知らぬ存ぜぬを貫き通すノアと怒れるフィルチの間にスネイプの低い声が割って入った。
「昨晩も申し上げたことですが、このツクヨミの探索能力の低さは目を見張るものがあります。フィルチの部屋から寮まで誰にも見られず――ましてや我々よりも早く戻るなど――不可能かと」
「ふむ……寮監は君だ、セブルス。判断は任せよう」
(わ、わあい……贔屓ばんざ……贔屓っていうのかなこれ)
喜んでいいのか迷うスネイプのフォローでノアが罰を免れた頃、たくさんのフクロウが大広間に舞い込み、ハリーの前に大きな包みを落としていった。
→08.トロールの襲撃