偽りの夜想曲
□07.真夜中の決闘
5ページ/6ページ
場所を譲られたスネイプはそのまま残るようノットに言い、眉間にしわを刻んだまま「さて、さて――」と危険な笑みを浮かべた。
「我輩はスリザリン生の1人が授業中に教師の許可なく杖を使ったと聞いてきたわけだが――Ms.ツクヨミ、君で間違いないかね?」
『は、はい……』
「ネビル・ロングボトムを助けようと不完全な呪文を使い、自らが怪我を負ったとか?」
『い、いえ……怪我はしていませんし、呪文が失敗したわけでもありません。ですよね、ノット』
「と、本人は言っています」
「ほう……では君がその気になれば無事にロングボトムを地上に下ろし、拍手喝采を受けるはずだったと――そういうわけですな?」
『そ、そうです!』
「ずいぶんな自信をお持ちですなあ。まだ入学して2週間も経っていないのに自己判断で人に杖を向けるなど我輩にはとても真似できぬ芸当だ」
(ひえっ。お、怒っていらっしゃる……!)
口角は上がっているが、表情はハリーをいびっていたときに近い。
助けた相手がグリフィンドール生だったのがよくなかったのかもしれない。
どう言い訳しようかとあたふたしていると、スネイプは意外なことを言った。
「おおかた寮監の授業で20点以上獲得し寮生の信頼を勝ち得て調子に乗ったのであろう。であれば我輩にも責任がある。遺憾ではあるがスリザリンから10点減点しよう」
『えっ』
「実力を見せ付けるのは結構。しかしグリフィンドール生に情けをかけるのは感心しない」
(教授に責任ってどういうこと?)
淡々と説教を続けるスネイプの声を耳に受けながら、ノアは初めての魔法薬学の授業を思い出した。
あのとき感じた『なぜ?』がぶり返し、どうしても疑問を解消したくなる。
『先生、眠り薬の問題で私を指名したとき、私が答えられると確信してましたよね?手も上げてなかったのに……どうしてですか?』
「……前日に調べていたのを見かけたからだ」
『それであの問題を選んだんですか?最初からハリーを指した後に私を指すつもりで?』
「さよう。君が迷子になるたびに呼び出されてはかないませんからな」
『えっ、えっ、それって私のボッチを解消するために?わあ……あ、ありがとうございます!』
「我輩はきっかけを与えたにすぎん。ものにするかどうかは君の実力次第だ」
(うわー、うわー!なんていい人ー!スリザリン生になれてよかったー!)
「ところで――」
去りかけていたスネイプは、首をひねって不機嫌な横顔を見せた。
「――ここから大広間までの行き方はわかるんでしょうな?」
『うっ……』
「……ノット、地図を書いてやりたまえ。迷子のたびに減点していたのでは我が寮の点数がなくなる」
「はい先生」
『お手数おかけします……』
そのために残されたようなノットに申し訳なさを感じつつ、ついでにと各教室までの行き方も書いてもらう。
(フレジョと仲良くなったら忍びの地図を写させてもらえるかな……って、もしかしてまだフィルチの部屋にある可能性もある?)
フレッドとジョージはまだ3年生だ。
くすねる前ならノアが手に入れるチャンスもあることになる。
夕食時に退院したノアは「リー・ジョーダンが学校を出る秘密の抜け道を見つけた」と話している2人を見てダメ元で探してみることにした。