偽りの夜想曲
□07.真夜中の決闘
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週が明けてすぐ、談話室の掲示板にお知らせが貼られた。
最初に見つけたのはフリントで、暖炉前を陣取っていた集団に大きな声で呼びかけた。
「おい見ろマルフォイ。飛行訓練が始まるぞ。木曜の午後3時半――おっと、グリフィンドールとの合同だ」
「ようやく来たか。ポッターがどんなものか見ものだな」
ドラコが気取って言い、同調するようなクスクス笑いがあちこちから起こった。
「きっとうまーく飛べるんでしょうね」
「我らが新しいスターだもの。飛べるわよ」
「ああ、まさにスネイプ先生がおっしゃるとおりだ。名ばかり有名でも意味がない。そろそろ英雄たる証拠を見せてほしいものだね」
自分の嫌がらせがきっかけでハリーが最年少シーカーになるとも知らず、ドラコはハリーを見つけては聞こえよがしに飛行の話をしてあざ笑った。
1年生がクィディッチの選手になれないなんてと不満をこぼすのも日常茶飯事で、自分の飛行テクニックの自慢ついでにマグルの乗ったヘリコプターを見事にかわした話は木曜日までに5回も聞いた。
「見ろよ。グレンジャーのやつ、また飛行の本を読んでるぞ」
「今さら本にかじりつくくらいなら、あの出っ歯で箒にかじりつくほうが現実的よね」
「それに隣のロングボトムの顔。あれは箒に触ったこともないって顔だな。魔法族のくせに飛べないなんて、僕だったら恥ずかしくて学校にいられないよ」
自慢と悪口は日に日に加速し、当日の朝にはいい加減に気になって注意をしようとしたノアにまで飛び火した。
「ノアも当然乗れるんだろうね?」
『い、一応夏休み中に練習は……』
「一応?頼むからスリザリンとして恥ずかしくない行動をしてくれよ。――クラッブ、ゴイル、お前らはせめて前と後ろくらいは間違えるなよ」
「ああ」
「もちろん」
「ところでどっちが前だ?」
声を揃える2人は、なぜか両手に持ったナイフとフォークを交互に見ている。
「それは左右だ」
盛大なため息と共に肩を落としたドラコがフォークを箒に見立てて説明を始める。
なんだかとても大変そうで、注意をする気はすっかり失せてしまった。
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