Letters
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ホグワーツの新米教授に品物を送ってから1ヵ月後に、素材店の新人店員の元にふくろう便が届いた。
手紙と呼ぶにはあまりにも素っ気ない、たった1枚の注文書。
しかし、それを読んだリーベは、先輩を捕まえて『見て見て』と珍しくはしゃいだ。
『ほら、宛名に私の名前が書かれてます』
「おー、よかったじゃん」
『メッセージも!』
「これはまたずいぶんと上から目線な内容だね」
『期待されているなら、頑張らなきゃですね!』
「ほんとほんと。いやー、リーベに頼んでよかったよ」
出掛けにつかまれた先輩は、ケラケラ笑いながら「よかったよかった」と何度もリーベの肩を叩いた。
「じゃ、俺はお使い行ってくるから2,3日よろしくね」
『はーい。入手日のメモの件もお願いしますね。忙しいならもっと担当まわしてくれても構わないですから』
「ダメダメ。まずはスネイプ先生のハートをがっちりつかむことに専念しなきゃ。こういうのは口コミなんだから、気に入ってもらえたら自然と取引相手も増えてくものさ」
「俺みたいにね」と言って眼鏡を押し上げ、先輩が出て行く。
いつもであれば『はいはい』とあしらっていたことだが、テンションの上がっていたリーベは、『そうですねっ』と両手でガッツポーズをして答えた。
――Ms.エピストーレ
山嵐の針及び残り3種、確かに頂戴した。君が良識のあるまともな店員であることを期待している。以下、11月2週目までに。
・コウモリの脾臓(ひとつずつ瓶に)8
・角ナメクジ(体長5cm程度のもの)50
・ネズミのしっぽ(サイズ不問)1kg
・ふぐの目玉(新鮮なもの)42
10月25日。
ホグワーツ魔法魔術学校 魔法薬学教授
セブルス・スネイプ――
1人になってからも、注文書に目を通すたびに口元が緩む。
今回の注文書は、前回の紙切れとは大きく違う。
宛名と、数行のメッセージがあるだけなのに、気難しいというスネイプ先生に合格の判を押された気分だった。
『11月2週目か……』
まだ少し時間がある。
新鮮な目玉が少しやっかいだが、店長に頼んで料亭にでもかけあってもらえば譲るなり入手先を教えてもらえるなりはするだろう。
ネズミのしっぽは腸を採集したときの在庫があるし、コウモリとナメクジもすぐに集められる。
が、目玉のことを考えると、あまり早く送りすぎるのもよくない。
かといってギリギリでは――と、リーベは手帳を片手に素材を取りに行く日程を逆算していった。
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