大きな栗の木の下で

□[後日談]可愛い子には旅をさせよ
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ある日、見慣れないシマフクロウが窓から飛び込んできた。

パサっと私の前に落とされた封筒には、Hの文字とそれを囲むようにして4つの動物が書かれた封蝋が押されている。

なつかしのホグワーツの校章だ。


卒業してからもう3年も経つのに、なんで今頃ホグワーツから手紙が届くんだろう。

もしかして同窓会のお知らせ?

それとも配達ミス?

首をかしげながら封筒を裏返すと、宛名はセブルス・スネイプになっていた。



「あ!」



寝室から降りてきたセブルスは、私の手の中の封筒を見て血相を変えて走ってきた。

大きな足音に驚いてターニャが泣く。

泣き声に気をとられているうちに、封筒はセブルスの手の中に移動していた。



『何の手紙?』



ターニャをあやしながら私は聞いたが、セブルスの返事は「ああ」という、まったくもって返事になっていないものだった。

しかも、手紙を持ったままくるりと背を向けられた。



「たぶん……いや……違うかもしれない……」



セブルスはしどろもどろだった。

私に背を向けたまま、まるでNEWTの試験結果を見るかのように慎重に封を切り、中からそっと羊皮紙を取り出している。

あ、耳の後ろに寝癖発見。

――じゃなくて。


怪しい。

怪しすぎる。

さっきの手紙をひったくった時の焦りっぷりといい、こそこそ中身を確認しようとしている姿といい、怪しさ以外何もない。


私に隠れてホグワーツと手紙のやり取りをするなんて、いったい何事よ。

まさかまだレギュラスのレポート書いてるんじゃないでしょうね。

いや、それはないか。

レギュラスもう卒業したし。


じゃあ何?

文通?

誰と??



私はそーっと近づき、目を細めながら背伸びをして横から覗き込んでみた。

ダンブルドアの署名だ。

え。

内緒の文通相手はまさかのダンブルドア?

文通にしては、えらく堅苦しい文体だけど。



『……試験結果のお知らせ?』

「うわ!み、見るなよ!」



ようやく見えた本文らしき部分には、“魔法薬学”という文字と“闇の魔術に対する防衛術”という文字が見えた。



『セブ、NEWTの追試を受けたの?薬学と防衛術落第してたんだっけ?』

「そんなわけあるか!」

『ちなみに私は魔法薬学を落第したままよ』

「マロンの壊滅的な成績は知ってる」



ため息をつかれた。

もともと純血の名家に永久就職する前提で育てられてて、学校の成績なんてまったく気にしていなかったんだから仕方がない。

そう胸を張って言ってやったら、「お嬢様め」と嫌味っぽく言われた。

そうして2人でクスっと笑う。


セブルスが挨拶代わりに嫌味を言うような人だと知ったのは、結婚した後だった。

学生時代にも誰かに忠告されたことがあるが、そのときは優しいよって反論した。

そしたらノロケはやめてくださいって怒られた。

誰だったかな。

記憶の中のセリフが敬語だからレギュラスかな。



「マロン?」

『あ、ごめん。何?』

「外に行かないかって」

『散歩?わかった。待ってて、支度するから』

「庭まででいい」



散歩をするような巨大な庭はうちにはないよ?




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