大きな栗の木の下で
□雨降って地固まる
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「マロン!なんで、こんな……ところに、いるんだ!」
『スネイプを捜していたら落ちたの。ねえ、誰か先生を呼んで――って、なにしてるのよ!』
スネイプは一度顔を引っ込めた後、足を出して、穴の中に落ちてきた。
『スネイプが降りてきても意味ないでしょ!出れな――』
「スネイプって呼ぶな」
『――え?』
うまく着地できなかったらしくよろけたスネイプは、「セブルスって呼べよ」と私の肩をつかんだ。
暗くてよくわからないが、私を見下ろすスネイプの顔は、少しつらそうに見えた。
走ってきたからだと言われればそれまでなのだが、息を弾ませているというよりは、息を詰まらせているといった方が合っているようにも見える。
「付き合っていたら、名前で呼ぶのが普通だって、言っただろ」
『うん……』
だから、スネイプって呼ぶように戻したんだけど。
スネイプはリリーと付き合うようになったから、あの子のことを名前で呼んでるんでしょ?
「婚約するって本当か?」
『そうよ。本当よ。イブに顔合わせがあって、次の日のクリスマスパーティで婚約発表をするの』
「僕は、別れないからな!」
『え?何言ってるの?私とスネイプは――』
「セブルスだ」
スネイプは私の言葉を遮って抱き寄せた。
「セブルスって呼んでくれ……」
力強く抱きしめるスネイプの声が震えているのは、寒さからではないだろう。
なんで今さらそんなこと言うの?
せっかく気持ちを切り替えて、次に向かおうとしているのに、どうして邪魔をするの?
今さらそんなことを言われたって、私はもう後戻りできない。
「好きなんだ」
搾り出される声が、私の心を締め上げる。
スネイプの口から“好き”という言葉を聞くのは初めてだった。
「ずっと、マロンが僕に言うよりずっと前から、僕はマロンが好きだった。いつも君のことばかり考えて、君ばかり目で追って……」
『うそ……』
「嘘じゃない。だから、マロンが僕を好きだと言ったときは信じられなかった。今までのマロンを見ている限り、どう考えても僕を好きになるはずがない。さっき、クジで選んだって聞いて、やっと納得したくらいだ」
『――それはっ』
「君のルームメイトに聞いた。いいんだ。きっかけは何であれ、僕はマロンと付き合うことができたからな。あとは別れなきゃいいだけだって思っていた。だから――」
『リリーが好きなんじゃなかったの?』
「違う。リリーは幼馴染みだ。あの時もマロンと仲直りする方法を相談していただけだ」
『そんな、』
それじゃ、私は勝手に振られたと思って落ち込んで、スネイプを避けて、婚約する意思を固めてきたというの?
そんな、馬鹿みたいじゃない。
私は――。
「聞いたよ。僕がいると都合が悪いんだろ?」
『そんなことない!』
「嘘をつくな。僕と付き合っていたことが知られるとまずいって教えてもらったんだ。だから、君を捜していた」
『どういうこと?』
「悪いが僕は君を婚約させるつもりはない」
そう言うなりスネイプは私を壁に押さえつけた。