大きな栗の木の下で

□[番外編]火中の栗をひろう
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いつもの木の下で本を読んでいると、マロンが走ってやってきた。



「マロン……?どうしたんだ、そんなに急いで」

「セブルスに早く会いたくて!」

「さっき授業で一緒だっただろう」

「でも、会いたかったの!」



マロンは隣に座るなり、腕を絡ませてきた。

「本が読めない」と言って腕を離そうとすると、「本なんていいじゃない」と言って僕から本を取り上げた。

そんなに力強く抱きつくな!

胸があたる胸が!



「……」



本を取られ、やることがなくなった僕は、湖に目を向けた。

意味もなく大イカを探す。

何かしていないと、腕にあたる柔らかい感触に意識が集中してしまう。



「セブルス、私のこと好き?」

「……え?」



へーゼルの目を真っ直ぐに向けながら、「好き?」と繰り返す。

甘い香りが鼻孔をくすぐり、僕の思考回路を鈍らせる。

いったいなんなんだ。

僕がこういうことが苦手なのを知って言っているのか?



「僕……は、」

「ねえ、好き?私はセブルスが大好きだよ」

「――っ」



そんなの反則だ。



「セブルスは?」

「僕は……、その……マロンが……好き、だ」

「本当!?」

「……嘘を言ってどうする」

「嬉しい!」



顔を輝かせて飛びついてきたせいで、バランスを崩した僕は地面に倒れた。



「ねえ、私のことが好きなら、大イカの吸盤取ってきて」

「……は?」

「肌にいい薬になるんだって。私、セブルスのためにもっときれいな体になりたいの」

「僕のため……?」

「うん。お願い。セブルスならできるでしょ?」



顔を赤らめながら、僕に覆いかぶさっている体を押し付けてきた。

なんなんだいったい。

ここは外だぞ!?

僕にどうしろっていうんだ!



「わっ!せ、セブルス?」

「マロン……」



首にからみついていた腕を掴み、身を起こし、僕はそのまま体を反転させた。

マロンの体を組み敷くと、マロンの顔に焦りの色が見られた。

その表情がよけい僕を煽る。



「ちょ、ちょっと待って……」

「今さら怖気づいたのか?」



マロンの頬に手を沿え、なでるようにして首元に滑らせ、そこで、手を止めた。



「……どこだ?」

「え?」

「マロンはどうした?貴様は誰だ」



***
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