裏story

□(キヘ)恋祭典
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「俺じゃないよ、キボムだろ」
「あ、ほんとだ。ちょっと悪ぃ」

ドンヘに一言言ったあと、目の前から少し離れ
ボタンを押した。



「もしもし」
『あ、もしもしキボム先輩ですか?私です!分かりますか?』
「ん?あぁ・・・バイトの」
『はい!あの今日半日、よかったら一緒に遊んでくれませんか!』



それはバイト先の後輩から来た祭りの誘い電話だった。
さっきまで楽しそうに歌っていたドンヘの鼻歌が少し弱くなる。
目を向けてみるとドンヘは急いで目を逸らし、何事もなかったかのように不自然に振舞っていた。


キボムは少し意地悪をしてみたくなり部屋を出た。
そして再び携帯に耳を傾ける。



「半日遊ぶっていうのはどういうこと?」
『あ、はい!今日近くの神社でお祭りがあって・・・よかったら一緒に行きませんか!』


・・・祭りか。とキボムの中で興味を引いた言葉が脳内を巡る。
しかしすぐに携帯に向かって口を開き言った。

「ごめんね、今日は先客がいるんだ」
『あ・・・そうなんです、か。じゃぁ・・・失礼します」
『ツー ツー ツー』




あの後輩の言葉は涙声で震え、最後は一方的に電話を切られた。
キボムの中であまり受け入れたくないタイプになったようだ。


「・・・次のバイトが気まずいな」


それだけを気にしてあとは何も無かったようにドアを開けた。
ドンヘと目が会う。ドンヘは非常にぎこちない動きで時計を見て言った。



「あ!俺もう帰る時間だ!じゃぁキボム俺は・・・」
「今日祭りあるんだけど一緒に行かない?」



ドンヘが一瞬固まる。そしてパアァっと顔を輝かせたかと思ったら
しょぼんと項垂れ、キボムに言った。


「でも、あの子と一緒に行くんでしょ?」
「ん、違うよ。来週友達と出かけるからシフト交換してくださいって電話してきたの」
「え、じゃぁ祭りは?」
「電話終わらせた後なんかの記事でみた。」



それだけ言うとドンヘは満面の笑みを浮かべ再び座布団に座りなおした。
空になったコップにキボムは麦茶を注ぐ。涼しげな音を鳴らして氷がぶつかり合った。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「ドンヘ遅いな・・・」



あの後ドンヘは一回家に帰り着替えてから来たいと駄々を捏ね始めた。
キボムはそのままでもいいだろと言ったが、ドンヘは
どうしても一回家に帰りたいと言って聞かなかった。
結局最後はキボムが折れ、ドンヘは一回帰りキボムの家の前で集合することになったのだ。


「何を隠してんだか・・・まぁだいたい予想はつくけど」


キボムが音楽でも聞こうとウォークマンを取り出そうとした瞬間
何かによって視界が遮られた。
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