くろす☆はーと
□第五話。
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5月中旬。
カラリと晴れた或る日、聖タチバナはかぶ高校との練習試合の為に、市営球場へと足を運んでいた。
試合の開始時間は午後1時。現在は未だ午前11時なので、余裕がたっぷり有る。
「今日はよろしくお願いする!」
聖タチバナの主将として氷狼がかぶ高校主将の聖徳に歩み寄り手を出すと、後ろの遥を見たのか、多少の汗を掻きながら聖徳も握手を返す。
そして練習の後に昼食を食べ、試合のスタメンが発表される。
「…今からスタメンを発表する!
呼ばれた者は前に出ろ!
1番センターが崎田!お前だ!」
「へいへい……」
「2番キャッチャー六道!」
「はい」
「3番セカンド原!」
「おおきに」
その後も、遥以外が名前を呼び上げられた際にギラギラと目の奥に闘志をたぎらせる。
以下がスタメン表だ。
1番 中 崎 田
2番 捕 六 道
3番 二 原
4番 一 大 京
5番 遊 田 澤
6番 三 高 梨
7番 左 名 波
8番 右 耶麻内
「9番ピッチャー……、
……匪口」
「……へ?」
誰もが先発に驚いたのか、視線が一気に集中する。
一番驚きを隠せないのは本人のようで、いつもの冷静な表情を崩して顔全体に赤みが差している。
「……監督、理由を聞きたい」
ずい、と聖が前に歩みでた途端、他の部員からも同様の意見がわき上がる。
「……俺が監督に無理を言った」
大仙が視線で助けを求めた直後、ため息を吐きながら遥が助け船を出す。
「……この前のこと、覚えてるだろ?
悪いけど、匪口はその時から俺の二枚看板の構想に入ってんのよ。
文句は有るか?」
「…………」
黙りこくる。
自分たちとは次元の違う選手である崎田が言うなら、といった感じだった。
それは、小枝との勝負後に遡る。