くろす☆はーと

□第三話
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秋季大会。
次年度まで試合に出られない遥を応援組に加えて、第一試合の雪国高校戦を迎えた。




「…………」



外野スタンドで遥は紙コップのコーヒー(砂糖ミルク無しのブラック)を飲みつつ、相手校である雪国の弱点を探る。
どうやら守備が堅い、と言うのが判明し、逆に打線の破壊力があまり無い、一番勝ちづらいタイプと。
そこまでを三回までに把握した後は中身の無い紙コップを口にくわえたまま、カリカリと自身のデータブックへ書き込んでいく。





マル秘ノート。
帝王実業内では恐れられた、正確無比なデータブックには、一地区のみならず全国の全地区、全選手のデータが載っている。
それが夏、春、秋と年三回の進化を遂げていく。




“天才”と騒がれようが、遥が欠かさずにやってきたこと。
今では当たり前のこと過ぎて、逆に欠かすと寝れなくなってしまう。


その時、聖タチバナ4番の大京が大きく打ち上げた。
無死2、3塁、先制のビッグチャンスだ。
右翼手が捕球した瞬間、3塁ランナーの野々山がタッチアップ。
深いフライだった為、返球は中継されただけ。
悠々とホームに返ってきた野々山を見て、7回裏にして試合はようやく均衡を破った。







8回表。
みずきが中継ぎとしてマウンドに立ち、投球練習を始める。
そのフォームを見、遥は何故か違和感を感じ取る。



「……?」



確かに変だ。
遥が首を捻った時、不意に後ろから声がした。










「あ、あの……」
「崎田さん……ですよね?」
「…………」



やれやれ。
本日10組目となるファンからの握手、サイン責めに遥は思わず溜め息を吐く。
まあいい、時間は取らないさ。
渋々、サインペンを受け取り、遥はキャップを取った。
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