くろす☆はーと

□第二話。
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聖タチバナ学園。
無駄に校舎が広く、野球部は地区予選で手こずると言う、そんな学校。
さっき軽く野球部の様子を見たが、一部にそこそこな奴が居るだけ。
はっきり言って話にならない。
唯一キャッチャーは全国レベルと感じたが、まだまだリードに甘さを感じる。
簡単にストライクを取りに行くべきタイミングが分かっていないようだ。
ここに来たばかりではあるが、既に溜め息が二桁いきそうだ。



「……なあ、あんた誰なん?」


気が付くと、俺の目の前にはユニフォームを着たチビが一人。
多分、帝王実業の制服が気になったのだろう、ジロジロと胡散臭そうな目だ。


「……、」
「ん?なになに?
啓太どうかした?」

不意に声が聞こえたかと思った時、視界にアイツが入る。
強引な引き抜きをし、金で解決させた、俺が世界で一番嫌いな奴。



「……おー、崎田くんお初ーっ!」



橘みずき。
日本で二人目の女性プロ野球選手が近いというピッチャー。
ムカつく位の笑顔を振り撒きながら、手を振りフェンス越しに俺に話し掛けてくる。



「啓太、帝王実業から来た崎田くんだよ!
ほら、今年の甲子園で西強相手に全打席ホームランした!」
「……ええ!?
あの崎田遥なん!?
ホンマにですか!?」




…五月蝿い。
未だ朝っぱらなのに、んな大声出すな。
言いかけて途中でやめる。
ここまで馬鹿でかい学校なら、近所迷惑もくそも無いな。
啓太とか呼ばれたチビの声で、練習中だった他のメンバーもぞろぞろ集まってくる。



「ほら、早く入った入った!」
「…………」



思わず、溜め息が洩れた。
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