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『蟻の巣』
―ep.1:百瀬 菜月という女―
陣内サン達が『死神屋』と言われるなら、私、百瀬菜月-モモセナツキ-は―――・・・
「牛丼。」
「「あ?」」
「今日は牛丼の気分だわ。
後、館内禁煙。」
火葬場、その付近。
保健所葬迎課出張所ロビーにて。
社長イスの如く豪華な黒革の椅子に寝そべりながら、書類に埋もれる女はのっそりと来客の2人を見た。
「・・・うっし、今日こそ牛丼っすね。」
「珍しいな、お前が外食なんて。」
「あそこのコンビニもとうとう制覇しちゃってさぁ。
商品入れ替えなるまでは他のトコで我慢しよーかと。
つーワケで、お持ち帰りヨロ。」
「パシリかよ!」
「いーじゃん。
霊柩車、改造したり修理してやってるし。
そもそも祐サンの私物化しているのも大目に見てあげてるし。」
「職場を改造して住んでる女には言われたくねースよ。」
「残念ながら合法だ。」
「残念なのはアンタの頭デショーガ。」
無礼な言葉をかけるひょろ長眼帯男、山崎祐介に女は立ち上がりながらやれやれとため息を一つつくと、頭目掛けてブンと投げた。
スコーン
「ガッ?!」
「・・・館内禁煙。
マナーとして携帯灰皿くらい持チナサイ。」
「じゃあ昼飯はラーメンだな。」
「肉・・・。」
「ならお土産ギョーザで。
窓直しとくんで、代車2号使って下さい。
祐クン、これ鍵ね。」
ガッ
「うぉ?!」
「ったく、少しは勘弁してやれ。」
「『徒歩はキツイからアシが無くなるのは勘弁』だからですか?」
「俺もトシなんでな」
不敵な笑みを浮かべるワイルド系ヒゲ男、陣内馨の横を、女は同じく不敵な、つかイイ笑顔をしながら通り、長い黒髪をなびかせながらカツカツとロビーを通り過ぎる。
廊下。
大きな窓の外には青々とした芝生とビニールテント。
真っ白な花の傍らには真っ赤な物体。
「・・・ネズミか?」
「うん。ウロッとしてたから。」
「オイオイ、仕事増やすなよ。」
「だいじょーぶ。トドメはゴム弾だから。」
物騒な話をしつつも、階段奥、地下へ。
武器が散乱している所では銃弾を与え。
PCで埋め尽くされている所では資料を渡し。
(修理費の欄を見て陣内が顔をしかめたが仕方ない)
修理工房では南無三となった霊柩車3号と5号を眺めつつ。
最奥。
観音開きの大扉を開ければ。
「――いつ見ても圧巻だな。」
「デショ?
私が丹念込めてこしらえてるからねぇ。」
壁中一面に広がるのは、真っ白い"棺"。
形も大きさも全く同じ、寸分の狂いもなく、簡素な装飾があしらわれたソレ。
はぁ、と溜め息をつきながらもその中の1つを撫でた。
「―――第13地区(ココ)は、大事なモノを亡くしちゃったからねぇ。
せめてお客サマには最低限の心配り(サービス)をしなきゃ浮かばれない、ってね。」
「・・・人体模型、棺の中に入れっぱなしにしとくのが心配り(サービス)か?」
「アレは試作品ー。
それを勝手に持ち出した祐クンが悪い。
にしても我ながら立派な整形フォルム。素晴らしいねぇ。陣内サンらの乱暴な取扱に堪えられる様、且つ火葬場でしっかりと焼け更には害が出ないようにするような素材探しから大量確保・搬送にどれだけ時間かけたことかああそう昔は本人のてか遺族によりデザインも質も材料も変えていたらしいのねぇそれに比べたら私の作品は皆平等流石じゃないだってしねばみなひとおなじはずなのにひんぷのさはかんけいな―――」」
「あー、ハイハイ。」
勿論、一般人の部類に(一応)入る陣内は、ウットリとした女に若干引いてるが、いつもの事なのでしょうがないと割り切っている。