第一書物室
□お見通し
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リナは今、町の裏通りを歩いていた。
裏の世界で有名なお菓子屋さんを訪ねたためだった。
その店はいろいろ裏取引などもやっているらしいのだが、表の顔のお菓子屋で販売するものがかなり美味しいらしく、普通の人も買いに訪れる。
そしてそこでは今、春期限定で新作シュークリームを販売しているのだ。しかも午後のおやつ時に販売開始で、限定100個。
これを逃したらこの美少女天才魔導師、リナ・インバースの名が廃る(関係ない)ということで、リナは1人こっそりと抜け出してきた。
何故こっそりかというと、それはもちろん、ガウリィやアメリアを連れてくれば100個なんてあっという間になくなってしまうからだ。
早くから並んだ甲斐があり、残りの72個全てを買い占めてすぐさま食べ始めると、本当にこれが絶品で、瞬く間になくなってしまった。
そして今はその帰り道なのだが…
「こそこそ後つけてんじゃないわよ。わかってんのよ、その柱の陰とゴミ箱の後ろと建物の陰にいるのは!」
見事に隠れ場所を当てられ、動揺した気配が伝わってくる。
そして少し間をおいて、チンピラ風の男が3人通路に出てきた。
「よくわかったな」
チンピラAが言うと、
「まぁちょうど良い。ここで落とし前つけさせて貰うぜ!!」
とチンピラBが言った。
問答無用で呪文を唱えていたリナは不思議そうに首を傾げ、思わず呪文を中断して尋ねる。
「あたしなんかしたっけ??」
チンピラCが怒って叫んだ。
「しただろうが!ついさっき菓子屋の前で!!」
おかしい。取り立てて何もなかったはずだが。
チンピラBが後を続ける。
「俺達の親分がなぁ、あのシュークリームをご所望だったんだよ!」
コケッ
リナがこめかみを押さえて
「…えーっと、つまりシュークリームが買えなかったって、そんなくだらない事で後つけてたわけ?」
と問うと、チンピラAが逆上して叫んだ。
「くだらない事だと!?俺達の首がかかってんだ!!」