小説 

□最期の時
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骸はいつも通りニコニコしている。
勝ち目のない無謀な作戦だったことは誰もが分かりきったことだった。


「骸、本当は怖いんだろ」
「僕がそんなことを思うはずが無いじゃないですか」

そう言い放つ骸の手は小刻みに震えている。

この敵アジトに残った、ボンゴレ側の最後の二人である、十代目ボス沢田綱吉と、その霧の守護者である六道骸だ。

無数の死体が転がる部屋の中、ぼろぼろになった姿で綱吉と骸だけが呆然と立ち尽くしている。
ここのアジトから出ることはもう出来ない。
二人もこの死体の山の一角になることしか、もう後は残されていない。


骸も相当六道眼を酷使しており、段々と精神と肉体が浸食されて弱ってきているようだ。
そのせいか普段見せなかった、骸の恐れと言う感情が手の振るえとして現
れた。その他の感情までもが、綱吉の超直感を前に筒抜けになっている。

どちらにせよ何か行動しなくては…
綱吉は眉間を狭める。
次期にここも敵側の人間が責めてくるだろう。

「骸…」
「何でしょうか」
「俺たちは此処でお別れだ」

精一杯に感情を押し殺し綱吉は言う。
骸は動揺を隠せないようだ。

「俺の死に顔を見せなくないし、お前の死に顔も見たくなんだ。」

綱吉は少しだけ強く言う。死に顔なんて縁起でもない事を本当は、言いたくはかった。

骸はその場にへたり込む。

「死ぬなら一緒がいいです、最期まで一緒に居たいです」

子供のように泣き出しそうな顔で綱吉を見上げて呻く。
そんな顔をしないでくれと綱吉は屈み、へたり込んだ骸を抱きしめる。

「骸の笑った顔をずっと覚えていたいんだ。あの世まで思い出としてもって行きたいんだよ」

骸は綱吉を抱きしめ返す。その目には大粒の涙が浮かんでいた。
綱吉だけにみせた骸の涙。
綱吉はそれ袖でぬぐった。
「泣かないでくれよ。せっかくの綺麗な顔が台無しだ」
綱吉は骸に微笑みかける骸もまた、涙を拭き微笑みかける。

「綱吉君。また会えますよね?」

「当然だろ。俺たちは絶対に離れ離れになどならないからね


いつまでも愛してるよ」
「えぇ、僕もですよ」

骸はとびきりの笑顔を綱吉に見せる。

「では仕事が終わったら一緒にピクニックでも行きましょうね」

「あぁ、行こう。俺は綺麗な湖の畔がいいな」

「僕は花の咲く草原がいいです!」

夢物語を語らう二人も、そんな夢が叶うなど微塵も思っていなかった。
しかし、今だけはせめてそうしていたかった。

たった数秒だったが二人の微笑み合いはとても温かく、そして寂しさを纏っていた気がする。

そして綱吉は意を決めると、骸のつむじに深いキスをした。

骸にする最後のキス。骸の髪の甘い匂いが、この時間を途切れさせたくないという甘えを膨れ上がらせる。
今までの楽しかった出来事も、嫌な出来事すべてが愛しい。


綱吉は心から祈った。

本当に生きて帰ってこれるように、また二人が巡り会えると祈りながら。たとえ、この世で会えなくとも…


綱吉と骸の物語の最後を締めくくるように、
綱吉は骸に愛してるよと呟いた。


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この話のネタは

綱骸は戦場で恐る恐る、つむじに祈るような深いキスをするでしょう。

というTwitterの診断結果からでした(笑)

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