小説 

□〜Quindi, se avete〜 W
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「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

綱吉は自分の出せる最大の音量で叫んだ。

綱吉が目を開けると、真っ暗な世界の真ん中で骸が幼い少年に殺されかけていたのだ。
状況は骸が危ないということ以外は何も分からなかったが、骸を助けなければいけないという意識が咄嗟に出たのだった。
幼い少年は骸に向けていた槍を下ろし、綱吉の方をみる。

「クソッ…もう少しだったのに…」

そう言ったのは、あの六道骸だった。前に居る六道骸の子供の頃の姿に見えた。

綱吉は驚きを隠せない。なぜこんなところでこんな状況になっているのか…


幼い骸は吐き捨てるようにそう言うと消えてしまった。

綱吉は倒れている骸に駆け寄る。

「骸。大丈夫?」
「綱吉君。僕は大丈夫です」
骸は体勢を直す。綱吉は不安げな顔をして骸に聞く
「ここはどこなの?どうして俺は…」
「僕にも分かりません。。気絶して目覚めたら此処に…君は?」
「俺は何だか嫌な予感がして、そしたらお前の声が聞こえてきて…助けてって。だから俺心配になって黒曜センターに向かったんだ。それでお前の部屋にいったら、お前が倒れてて、右目にかきむしった跡が有ったからなでたんだ…そしたら急に頭痛がして痛くて痛くて目を瞑って、そうして目を開けたら骸が骸に襲われてて…」
思い出しながら綱吉は説明を続ける。
右目が気になり骸の右目を見る。
綱吉は骸の顔を見ると素っ頓狂な声を上げた。
「なんです?人の顔を見て叫ぶなんて」
「だって…右目が…」
「右目?」
骸は自分の右目に手を当てる。先ほどの強い痛みはなく、何時も通りの球体の質感が瞼の薄い皮越しに伝わってくる。
何だかいつもの重々しさがなく、軽くなったような気がした。
「僕の右目がどうしたと?」
「右目の色が左目と同じ色になってる…六の文字も無いし」
骸は驚き、目を丸くすると右目を強く押さえた。しばらくその状態で居た後に綱吉に向き問うた。
「君…僕の右目に触れたと言いましたよね」
骸の唐突な質問に綱吉は焦る。おどおどしながらそうだよと答えた。

「そうですか…」
「何かわかったの?」
「ここは僕の夢の中だ。そしてさっきの幼い僕は、僕の右目。」
「なんで俺がお前の夢の中に?!」
「先ほど右目に触れたと言ったでしょう?あの時の僕の右目は暴走状態にあり、僕の体と意識を喰おうとしていた…」
「どういうこと?」
綱吉は訳が分からず質問をした。
「僕の意識や神経はほとんど右目に集中しています。それの制御が上手くできなくて、君の意識まで吸い込んでしまった」
「じゃあ…もしさっき俺が来てなかったら!」
綱吉は必死な顔になって骸に聞く。
「そうです。僕はあの右目に飲み込まれていた。君のおかげで助かりました、ありがとうございます。」

綱吉は骸に微笑みかける。

骸は急に立ち上がった。「そろそろ夢が覚めます。」
「えっ、本当!」
「良かったですね。無事に戻れるみたいですよ」骸は軽く微笑みながら、綱吉に言った。
それに返事をするように綱吉は笑う。


向こうの方から小さな光が溢れてくる、失明しそうなほどに強い光が…
あまりの眩しさに目を瞑る。


―――――――――――目を開けるとまた黒曜センターに戻っていた。
骸はまだ目覚めていないようで、先ほどみた顔よりも少し柔らかな顔になっていたきがする。

右目の蚯蚓晴れはしっかりそこに残っていた。
うっすら血も滲んでいる。


しばらくすると骸がゆっくり目を開けた。
右目はまたもとの紅に戻りそこには六の文字が刻まれていた。

「骸!やっと気がついたか」
「僕は…いつからこうして…」
「夢が覚めた時から一時間位かな…」
「そうですか。あの、綱吉くん?」
骸は目線を自分の手に落とし、綱吉に問う。
「なに?」
「失ってしてしまったものは取り戻せるのですか?」

えっ?と綱吉はいった。急に投げかけられた質問の意味が分からないようだ。
「どういう…意味?」
骸は綱吉を見て言う。


―ねぇ、綱吉くん。僕はもう何も壊さずに生きていけるのですか?

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